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2021年4月 6日 (火)

一通の激励手紙と返信

Sakuranoshirobashi20211

 3月下旬、大学進学を控えたある青年から一通の励ましのお手紙を頂きました。他にも善意にあふれる同様のお手紙を頂きましたが、ことに心に響いたものだったので、ぜひ御披露したいと思います。私の返信、それに続く御本人からの返信も、併せて掲載いたします。お手紙は御本人の了解のもと、一部字句修正させて頂きました。
 この方は今年の4月から、県外の国立大学で政治・経済の勉強を始められるとのことです。私は今回、大きな挫折を経験しましたが、将来新しい可能性が生まれることを期待しております。


最初のお手紙(青年→内田)

拝啓
 内田先生、また貴後援会の皆様におかれましては、昨年に岡崎市長選挙にて大変残念な結果となってしばらく経ち、先生の再起へ向けご奮闘なさっていることと存じますが、若輩者ながら、私から来期、又はもしか現職が解職請求により失職した際の先生の再起を心より期待して、激励申し上げます。
 昨年の選挙では、私は先生が再選を果たされるものと確信し、十八歳となり初めて得た一票を先生に投じたものの、結果として中根氏が大差にて勝利し、私は愕然としました。そしてそれまで注視していなかった氏の戦法を知り、財源など到底確保しえない一人当たり五万円の支給や、長きにわたり大企業も加わり計画を練ったコンベンションホールの白紙化などそのあまりにも無謀で無責任で、無知な有権者をだますような公約に辟易し、また内田先生がコロナ対策をしていないというデマも併せて票を稼いでいたことを知り、このような人が内田先生を破ったのかと怒りに覚えました。(しかし先生の陣営も慢心とまでは申しませんが、権力に対してなんとなく目が厳しかった情勢を察して、集会が憚られた状況であったとはいえ相手に言われっぱなしに終わらない選挙活動は出来なかったのでしょうか)

 氏は当選後直ぐに田村厚労相に対して「水道事業にコンセッションを導入しない宣言」なる、あまりにも幼稚で書式すら大人であることを疑うような文書を岡崎市長の名のもと提出したことやコンベンションホールの白紙化を企業に通知したことをTwitterにて公表しました。私は内田先生が築いた国(省庁)や民間との信頼関係を著しく損ねる氏の暴政を許せません。私の考えでは氏は票を買ったにすぎず、水道の民営化反対をはじめとする政策の転換や先のとんでもない宣言を彼の独断で提出することに市民は賛成したとは言えません。結局その代金たる五万円の支給については、議会にて圧倒的多数により否決されましたが、氏は恥ずかしげもなく、提案したことで公約を果たしたことになる旨述べる始末です。
 この騒動は全国的に報道されましたが、現在ではほとんど報道されず市民も氏に対する不満を忘れかけているように思われます。私は氏の再選はあり得ないと思う一方、今期は安泰であるとは思っていないだろうかと日々悶々としております。

 市長職を奪回し、氏がかき乱した方々との関係を修復することができるのは内田先生しかおりません。先生は市債の大幅な減少と税収増加、国や民間と連携した積極的な公共事業、総合病院の新設などで手腕を発揮され、二〇二〇年の日本総合研究所による中核市の「幸福度ランキング」では岡崎市は全国で豊田市に次ぎ第二位と躍進しました。このような実績にもかかわらず、多くの市民が中根氏のデマや現実味のない公約に騙されてしまいました。実際、私の高校のクラスには中根氏の当選を受け、「五万円のほうが勝った、やった。家族にも頼んだんだ。」と喜ぶ生徒がおり、普段選挙へ行かない無知な人まで動員した中根氏の作戦勝ちかと納得する一方、彼らの政治への意識の薄さに落胆しました。特に去年から今年にかけてはこのことを実感します。国の政策に対して、TwitterをはじめとしたSNSやメディアで得た誘導や偏見を含む情報を基にした批判をする人や信仰に近い思想から意見を異にする人に攻撃を仕掛ける人など、所詮政治とは無知な人に気に入られるもの勝ちかと思わされます。
 この手紙を書くきっかけとなったのもそのことで、先日岡崎観光伝道師である東海オンエアが中根市長とともに彼らをモチーフにしたマンホールの除幕式に参加した模様を公開しました。その動画には中根氏に対して一部批判がある一方で「腰が低い」「優しそう」などと話し方や見た目のみを根拠とした賞賛のコメントが集まっております。これはまったく政治家としてあるべき姿ではなく、このような風潮はよくありません。あのような首長を誕生させたことで人々が自身の考えを見直すきっかけになることを氏の当選直後期待しましたが、ただのニュースとして忘れ去られ全く望み薄であるようです。私は将来政治の世界に入る気は先の理由からありませんが、次世代を担う者としてその行く先を大変憂慮しております。ぜひ先生には、一時的ながら政治の世界への関心が高まった岡崎市で以前のような政治をしていただき、選挙に対する意識の変革をもたらしていただきたいです。直接お会いして激励差し上げたいところではございますが、情勢の関係憚られますので、離れたところからではございますが私は誠心誠意応援致します。
 しかしながら私は今春の大学入試にて県外の大学への進学を決めたため、リコール運動や次回の投票はおそらくできません。それでも岡崎市で生まれ育ったという誇りを捨てたくはありません。重ね重ね申し上げますが先生の再起を心からお祈りします。以上末筆ながら私の思いが伝われば幸いです。

敬具


返信(内田→青年)

拝啓
 進学準備でお忙しい中、心温まるお手紙本当にありがとうございました。
 早速読ませて頂きましたが、18歳の方が行政の仕組みや運用システム、選挙の実態まで正確に分析し、理解をしてみえることに驚かされました。
 地方自治体の仕事は法律にのっとり、国や県との連携・共同、民間との協力無しには実現できません。ことに昨今のように市民の要望が多様化し、財政事情が思うにまかせない中、民間の力を上手に使いながら事業計画を作成してゆくことは不可欠なことだと思っております。
 しかしながら、常に野党的立場にあり自ら建設的な提言もせず、反対ばかりしてきた人たちの中には、議員であってもそうしたことを理解していない方がみえるというのが現実であります。
 私は今でも自分が行ってきた政策は合理的なものであり、岡崎市にとって適切なものであったと確信しております。
 これまでの岡崎市の豊かさの財源は「モノづくり産業」によるものです。そこに岡崎独自の歴史文化遺産と美しい山、川の自然空間を活かした観光産業、山間リゾートを整備することで新たな財源とより豊かな市民生活が実現できるものと信じ邁進してきました。
 その政策の実施に向け庁内、議会における検討、議論はもちろんのこと、外部団体、識者、専門家、地域代表、各業界の方々とも数多くの話し合いの機会を持ち、8年間で400回を超える市民対話集会・地域説明会を行い、望まれれば小中学校、全高校、大学まで出かけてゆき事業説明とフリートーキングによる議論の場を持ってきました。(今の人は事前に選別した代表者だけとの話し合いを公開しタウン・ミーティングと称しております)
 いずれにしても、これほどの手間と時間をかけて事業を推進してきた市長は私のみかと自負しております。
 しかし、新型コロナウィルスの感染拡大のため、この一年間だけ思うような活動を行うことができませんでした。また現職の市長であるため選挙直前まで仕事が一杯で告示の3日前にも上京して各省庁に要望活動を行っておりました。
 そうした状況における選挙でしたが、形としては共産党を除く政党とほとんどの業界団体からの推薦を得ての盤石の体制での選挙でした。結果がこうなってしまえば、慢心や油断と言われても返す言葉もありませんが、現職の市長選挙と言うのはどこでもこうした形で行われるものです。
 ただ、今回は相手が元国会議員で、ある程度の知名度のある人であり、推薦に加え政策協定まで結んだ各労働組合もコロナ禍により各組合員への連絡が不徹底なものとなっていたと聞いております。協力をお願いする立場としては、それ以上の介入はできませんでした。
 今回コロナ禍での不十分な形での選挙運動、禁じ手の「一人5万円還元」公約とウラミはありますが、選挙に敗北したという厳然たる事実の前に「これが天命、潔く身を引く」ことも考えました。しかし、あなたと同じく多くの支援者の励ましの声に支えられてガンバッております。
 今回後手を踏んでしまったSNS(ツイッターなど)を使った選挙作戦についてはしっかりと対応して参りたいと思っております。また気がついたことがあればぜひ教えて下さい。

 民主主義が衆愚政治に陥りがちな欠点があることは、いまさら中国の共産主義者に指摘されるまでもなく、ギリシャ・ローマの時代から多くの識者が言ってきたことです。はからずも今回それが我々の地元において再び立証されたことは残念な限りです。
 TVのニュースで「5万円で投票した訳ではない」と大見栄を切っていた共産党支持者らしい御婦人がいましたが、昨年の国からの10万円給付金を受けなかった方は、忘れていた方も含め全岡崎で57人にすぎません。各種アンケートでは「本当に困っている人に」と言っていた人も多かったのですが、残念ながらこれが人間の実態であります。もちろんコロナ禍のもと将来への不安を感じていた方がそれだけ多かったということでもあります。
 本来ならば若く理想に燃えるあなたのような見識の高い方にぜひ政治の道に進んで頂きたいものですが、一般に本当に賢い人は、政治のようにドロドロして、人間関係の面倒くさい世界には入ろうとしない方が多いようです。
 マックス・ウェーバーの『職業としての政治』の最終章にあるように、政治家とはいかなる苦境にあっても決してくじけない強い精神と肉体の持ち主でなくてはならないと思います。
 私が御期待にお応えできるものかどうか分かりませんが、これからもできる限りの努力をして参る覚悟ですのでよろしくお願い致します。

 将来に向けて実り多き大学生活となることをお祈り申し上げます。本当にお手紙ありがとうございました。

敬具


2番目のお手紙(青年→内田)

 私が差し上げた手紙をお読み頂き、お返事まで下さり本当にありがとうございました。大変嬉しかったです。
 私は先の手紙を書くにあたって、市のホームぺージで例のコンベンションホールに関する資料を見たり、様々な媒体で勉強し、PFIやVFM、プロフィットシェアリングなどの知識を得た上で、あくまで今の人への私怨ではない見地から書くことに努めました。

(中略)

追伸
 現職故の事情で選挙活動が上手くいかなかったことを理解せず、苦言にも至らない事案を添えたことをお詫び申し上げます。
 戯言かもしれませんが・・・
 私は私が生きている間に現在の普通選挙に基づいた政治に限界が来て、今のロシアや中華人民共和国のような体制になるのではないかと危惧しております。
 まともな有権者教育が行われて、人々を現実的な判断に導くことができればと思いますが、国家による洗脳と声の大きな人達に焚き付けられてより一層状況が悪化するのは目に見えております・・・。


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