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2019年12月13日 (金)

中部ブロックプラットフォーム PPP/PFI推進首長会議

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 戦後、全国で一斉に行われた国土再建事業として形成されてきた社会インフラが、これから再整備と施設の更新の時期を迎える。財政力のない自治体は自力でインフラの更新をできないため、民間の力を利用しなくてはならないところも出てくることになる。
 健全財政の自治体においても、多様化する市民ニーズに対応するために限られた財源の中ですべて自力で行うことは難しくなり、民間の力を活用する必要が出てくる。また、サービス施設、娯楽施設の運用においては民間にノウハウの蓄積と豊富な経験があり、そうしたものを活用した方が良い結果をもたらすこともある。
 現実に社会資本の維持管理・更新費は、2018年度に約5.2兆円であったものが、30年後の2048年には最大で約1.3倍になると推計されている。実際、人口減少と財政難によって従来のやり方では公共施設や公共サービスの維持は困難であり、民間事業者の資金やノウハウを活用して行政のコスト削減や効率化を行うことが必要となってきてもいる。
 これまでと同じやり方では、公共施設の維持や同レベルの公共サービスを続けてゆくことは困難となるため、これからは、

・PPP(Public–Private Partnership・・・公共施設の建設、維持管理、運営を行政と民間が連携して行うこと)

・PFI(Private Finance Initiative・・・PFI法に基づき、公共施設の建設や維持管理、運営を民間の資金や能力により行うこと)

 を用いることが必要になるということである。
 しかし本来は公が行うべき公的事業を、営利事業者である民間に任せてしまうことに危惧の念を持つ方達もあり、PPP、PFIの採用は自治体によってまちまちである。そうした状況にあって、全国で行われている先進事例に学び、中部地域で行われ実績を上げている自治体のケース・スタディを行う目的で始まったのが、この「PPP/PFI推進首長会議」であると言える。

 少々長すぎる前置きとなったが、要するに国土交通省の依頼を受けて、岡崎市で行われているPFI事業についての講演を行ったのである。
 10月21日(月)、中部ブロックプラットフォーム「PPP/PFI推進首長会議」は名古屋市演劇練習館で開かれた。以下は当日の基調講演の内容である。


はじめに
 岡崎市長の内田康宏であります。本日はこのように基調講演の機会をいただきありがとうございます。それでは、さっそく本市の公民連携事業の取組みについて、ご紹介させていただきます。
 岡崎市は、愛知県の中央部に位置し、大正5年に県下で3番目、全国で67番目に市制施行し、平成15年には中核市に移行しました。また、自動車産業に代表される「ものづくり」に支えられた西三河の中心都市であり、人口は約39万人で今後も増加する傾向であります。
 さらに、江戸幕府を開いた徳川家康公の生誕地としての歴史文化遺産や、市内を流れる矢作川、乙川の清流による独自の魅力ある景観といった、本市独自の資源を強みとして活かすべく、現在「ものづくり」に加えて、もう一つの経済の柱として「観光産業都市」としてのまちづくりを進めています。
 一方、行政運営においては、多様化する市民ニーズへの対応や、一斉に更新時期を迎える公共施設への対策など事務量は膨大化しています。
 そこで、本市では公民連携を「成長戦略」や「行財政改革」の柱の一つに位置付け、あらゆる分野やサービスにおいて公民連携事業の推進を図っています。本日は、本市で進めています様々な公民連携事業の具体的な事例を紹介したいと思います。

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 本市では、現在公募中のコンベンション施設整備事業を含め、PFI事業は7件、また、市有地を活用した民間提案による賑わい創出事業が2件、その他にも大学病院誘致に関する補助事業や、民間事業者との連携協定やまちづくり全体を公民連携で実施するなど、様々な事業を実施することで多様化する行政ニーズに対応しているところであります。

市立小中学校への空調施設整備事業
 まず、昨年度から進めてまいりました、市立小中学校への空調施設整備事業についてご紹介いたします。
 この事業はPFI手法により、小学校47校、中学校20校の全校の普通教室や特別教室などの1,790教室にエアコンを設置し、その後約10年間の維持管理を含むものであります。
 契約金額は約58億円で、施工には複数の市内業者が構成企業として参入しています。

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 小中学校へのエアコンの設置については、私が市長に就任した7年前から事業の検討がされておりましたが、当初は従来の手法での実施を念頭に進めておりました。しかし、昨今の災害とも言える猛暑により、迅速な対応が必要であることから、工期の短縮に向けて他自治体の事業を参考にすると共に事業への参加実績のある金融機関や事業者の意見聴取を行いながら、事業成立までのプロセスを見直しました。
 従来型の施設整備事業は基本構想から実施設計まで4年程度を要し、そこから工事に着工し完了するまでに数年かかることから、最低でも5年以上かかってしまいます。
 一方、PFIは従来手法に比べ、事業開始までの期間を1年程度は短縮することができます。しかし、さらなる短縮を図るため学校施設の空調設備は他の自治体での事例が多数あることに着目し、類似事例を参考にすることで検討期間や事務手続き期間の大幅な縮減を図ることができました。さらに、工事期間短縮を加点項目とすることで、事業者の努力による期間短縮も誘導しました。
 その結果、昨年8月の実施方針を皮切りに、9月には募集要項を公表し、11月には優先交渉権者を決定することができました。そして、事業者の努力による、夏本番前の今年6月末には小中学校1,790教室にすべて設置を終えることができ、運用も開始しました。

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 この事例では学校施設が定型的であり、類似の事例が豊富なことから他事例をテンプレートして参考にすることで、検討から実施に至るまでのレールを敷くことができ、事業期間の短縮を図ることができたわけです。
 こうした「テンプレート方式」は、小中学校の空調設備に加え、給食センターや公営住宅、さらには廃棄物・処理施設といった、PFI事業の事例が多いものでは特に活用がしやすいものと考えています。

乙川リバーフロント地区整備事業
 次に公民連携事業によるまちづくりの事例として、乙川リバーフロント地区整備事業について説明いたします。
 このリバーフロント地区の整備は、本市が進めております「観光産業都市」として第一歩となる事業であります。市内の中心部を流れる乙川の河川敷や周辺道路の整備を行うと共に、駅前整備や公園整備に加え市街地における空き家のリノベーションなど、一定の事業エリアを定め集中的に事業を実施することで事業の連携や相乗効果によってエリア全体の価値や魅力を高める事業であります。

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 こうしたリバーフロント地区の公共空間・各拠点を結ぶ、約3キロのまちの主要回遊動線がかつての岡崎城跡の「総曲輪(そうぐるわ)」の一部と重なること、また、動線がアルファベットの「Q」の字に見えることから、このエリアの公民連携プロジェクトの総称を「QURUWA戦略」と名付け、様々な事業を展開しているところであります。
 このエリアは平成27年3月に愛知県の管理河川では初となる「かわまちづくり支援制度」に登録されました。その結果、河川敷地占用に関する特例措置という規制緩和を図ることで、これまでできなかった民間主体の水辺空間の営利事業が可能となりました。
 今では、河川敷を活用したキャンプやナイトマーケットなど、様々なイベントが実施されています。また、エリア内の公共空間を民間事業者に活用していただき、まちづくりの一翼を担ってもらっています。

 その一つが、東岡崎駅周辺地区の「北東街区有効活用事業」であります。
 この事業は、東岡崎駅前の市有地を民間事業者の事業用定期借地として貸し出しを行い、駅利用者の駐輪場整備などの条件を付した上で、民間事業者の独立採算事業として実施するものであります。

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 この施設は「オト リバーサイドテラス」という名称で、ホテルやカフェ、レストランを始め、スポーツジムなどで構成される複合施設であり、いよいよ11月2日にはグランドオープンの運びとなっています。
 また、行政においてペデストリアンデッキの整備を行うと共に、その中央には市民の皆様のご協力により、1億円を超える浄財を得て高さ9.5メートルという、日本一の高さと偉容を誇る、若き日の徳川家康公の騎馬像の整備を進めており、こちらも11月2日にお披露目となります。これでようやく「家康公の生誕地」として胸を張れると思っております。
 これまで中部地域以外では、家康公生誕の地が岡崎であることが認知されていなかったり、「岡崎は家康公の生まれ故郷と言いながら、駅前にまともな像一つない」と言われたりしておりましたが、この新たなシンボルが「家康公生誕の岡崎」のPRに大きな役割を果たしてもらえるものと期待しています。

コンベンション施設整備事業
 次にコンベンション施設の整備であります。
 この事業は、乙川に隣接すると共に、本市のシンボルである岡崎城を一望できる市有地を活用して、今まで市内や西三河地域では開催することが叶わなかった国際会議や1000人規模の会議や式典、レセプションなどが開催できるコンベンション施設の整備と、それに併設される「上質なおもてなし」を提供する、ホテルの誘致を行う事業であります。

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 この事業の特徴は複数の事業を一括で公募するという点でありまして、コンベンション施設についてはPFI事業として整備を行います。また、ホテルにつきましては先の北東街区同様に、事業用定期借地による民間の独立採算事業として実施します。
 さらに、この敷地に隣接する乙川河川緑地の指定管理者も併せて公募します。これに加え、隣接地で整備を進めています桜城橋(さくらのしろばし)と橋詰広場のPark-PFI事業への事業計画や連携についても評価することで、自らの施設の損益だけでなく、まちへの経済波及や発展に貢献してもらえる事業者を選定できる仕組みとしています。
 先月には募集要項を公表しておりまして、今後、選定にかかる手続きを経て来年2月末には優先交渉権者を決定し公表する予定となっています。
 その桜城橋につきましては、来年3月の供用開始を目指して準備を進めている、人専用の橋、いわゆる人道橋(じんどうきょう)であります。この橋は、市民や観光客から愛され、親しまれる橋梁になるよう意匠性にも配慮しており、地元産のヒノキ材を使い、床や高欄を木装化します。
 この人道橋の幅員は16メートという広さを誇るため、拠点間の動線や回遊拠点としての役割に加え、この地域で生活する市民の暮らしの質の向上を目指して、都市公園に位置付けております。加えて、供用開始後には民設民営による公募対象公園施設としてカフェやレストランなどの整備や運営を行うものであります。
 このように、様々な事業の連動により、まちの活性化や市民の暮らしの質の向上に繋げることが今後のまちづくりには重要なポイントであると認識しており、このエリアではそうした動きが起こりつつあります。
 公民連携による持続的なまちづくりを進めるには、行政と民間の適切な役割分担が必要です。今回の事業では、行政は大規模なハード整備や公共用地の提供に加え、規制緩和といった役割を担い、民間事業者は行政が整備したハード上でのソフト事業の実施や、公共用地を活用した独立採算事業の実施などを担っています。
 さらに将来的には、こうした活動に誘発され民間事業者による開発事業など、様々な投資活動が起きることを期待しているものであります。
 皆様もまた是非一度岡崎を訪れていただき、変わりつつある岡崎を体感していただければ幸いです。

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 また、この他にもPFIによる工業団地や墓園、児童遊園の整備に加え、定期借地による駐輪場整備など様々な公民連携事業の検討を進めています。
 とはいえ、こうした公民連携事業はまちづくりの手段の一つであります。私の進める政策の究極の目的は、岡崎の市民、殊に子ども達が自らのふるさとに対し、これまで以上に大きな愛情と誇りを持てる、そんな「夢ある新しい岡崎」を築き上げることであります。
 その実現に向けて、今後も事業ごとに適切な手法を選択することで行政サービスの向上に繋げてまいりたいと考えおります。その手法の一つとして公民連携事業の積極的な取り組みに向けまして、皆様方には引き続きの情報提供やご支援をお願い申し上げます。
 また、本市ではお力になれることがあれば、喜んでご協力させていただきたいと考えております。

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