モンゴル訪問記 4.歓迎会、ウランバートルの郊外
初日の歓迎会
7月24日、私達を歓迎して下さった方達は、自由化した社会の経済的成功を背景に政界へ歩を進めている人達であった。若い政治家の多くはかつてのようにソ連邦ではなく、欧米や日本への留学経験者が多く、会話をしていても進歩的で合理的な思考と優秀さが感じられる。
ことに私を空港まで出迎えてくれたアーチェリー協会の副会長である37歳のエルデネボルド氏は、モンゴル国立大学で学んだ後、国費留学生として私と同じ米国インディアナ大学に留学しており、モンゴル滞在中は「インディアナ・ブラザーズ」とお互いを呼び合っていた。ハーバード大学のケネディスクールにも学んだ彼は、モンゴルの次代を担う若きエリートの一人である。
(左側がモンゴルアーチェリー協会副会長のエルデネボルド氏、右側がウランバートル市のスフバートル区議会議長)
エルデネボルド氏は帰国後、モンゴル大統領府に職を得、その後、モンゴル民主党の政策担当の一人となった。現在は民主党青年協会のリーダーで、来年の国政選挙に立候補することになっており、「来年、再会する頃は私も政治家です」と言っていた。
また彼は、国際的火星探査計画推進に携わるモンゴルの重要人物の一人でもある。モンゴル南部に広がるゴビ砂漠の自然環境が、重力と大気以外が火星と酷似していることから、現在、国際的火星探査計画であるマーズワン・プロジェクトのキャンプ地として計画が進められている。この計画には世界107ヶ国の人々が関わっているという。この計画の目標は「火星への移住」であり、組織は研究者、技術者、教育者の3部門によって成り立っている。
彼の面白いところは、こうした高尚な話をしているときに突然スマホの写真を見せて「この美しい女性が私の奥さんです」とアメリカの芸能人のような言いぐさで話を振ってくることである。
事実、写真のとおり、楊貴妃(ようきひ)もかくあらんという美女ではあるが、日本人で自分の嫁さんについてこういう紹介の仕方をする人はあまりいないだろう。この写真はハーバード大学留学中のパーティーでの奥さんの出で立ちであるが、彼曰く「やり過ぎだ」ということである。確かにまるでマリリン・モンローのようなこうしたメイクとスタイルでパーティー会場に現れれば、男達が放ってはおかないだろう。
奥さんもモンゴル国立大出で、共にハーバードに留学した才媛であるが、この時彼は怒って帰ってきてしまったそうである。実に人間的な話で面白かった。
いずれにせよ、明治時代の我が国のように外国で高等教育を受けた、こうした若きリーダー達が育っているこの国が間もなく転換の時を迎えることは十分予想されるものである。
初日の夜はホテルのレストランで歓迎の宴を開いて頂いたのであるが、上記の話を除けば固い話に終始した。
ウランバートルの郊外へ
翌朝、道路が渋滞することを見越して早めにホテルを出て郊外に向かった。予想どおり市街地から渋滞は始まっていた。郊外に向かう枝道に入ると、デコボコの悪路を縫うように路線区分を無視して車が走っている。センターラインをオーバーしてS字型に対向車線に入り、本線に戻ってくるのだが、初めて見た時は驚いた。まるで日本の暴走運転(あおり運転)のようである。それでもお互いに了解の上での運転であるせいか事故もなくスムーズ(?)に走ってゆく。
2時間ほど走ってゆく間に、故障のために路肩に駐車してボンネットを上げ修理をしていたり、タイヤ交換をしたりしている車を何台も目にした。郊外に向かうドライブは、まるでダートトライアル・レースに参加しているようなあり様であり、車の天井に頭をぶつけたり舌をかんだりしないように注意する必要があった。横ユレもかなりのものであり、このような中、私達にモンゴルの説明をしながら運転を続ける様は曲芸のようであった。
途中、休憩のために何度も道路ワキに車を止めて車外に出た。波のようにうねりながら地平線まで続く一本道。その上に限りなく広がる青空とゆるやかに移動する白い雲。道路の左右には薄緑色のじゅうたんのような草原が曲線を描いている。平原というより緑の海のようである。
こうした風景を眺めていると、日本の4倍の面積を持つ国土、そこに住む300万人余りの人口、遊牧民としての悠久の歴史を体感できるような気がした。ドライ・アンド・
クールと言えばいいのか、いかにもオゾンをいっぱいに含んだ草いきれと共に、草原を渡る風のさわやかさが際立って心地良く感じられた。
私達はウランバートルの東、約54キロの地にある「ツェンジンボルドグ」という名のテーマパークに立ち寄った。
ここには高さ12m、直径30mの円形の台座の上に、高さ30mの全ステンレス製の巨大なチンギス・ハーンの騎馬像が建っている。エレベーターで像の腹部まで上がり、そこから馬のたてがみ上を通り、馬の頭の上の展望台まで登ることができる。台座の中は博物館とレストラン、オミヤゲ物売り場となっている。
像は現在の大統領が民間企業のトップを務めていた頃に、私財を投じて建てたものだそうである。中央ホールには像の大きさに合わせた巨大なムチと高さ9m、長さ6m、幅2m半の長靴が置かれている。
この長靴は画家である大統領の娘さんのデザインによるものだそうだ。巨大な像ではあるが、世界第8位の大きさとのことである。この秋、東岡崎駅前に完成する若き家康公の騎馬像も大したものと思っていたが、上には上があるものである。 (つづく)
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