モンゴル訪問記 9.中国で暗躍する臓器ビジネス
大統領の思わぬ大サービスにより、次の面会時間の迫っていた我々は市内見学の時間をはぶいて、在モンゴル日本大使館へと向かった。
昨今の世情を反映してか、大使館の警備もしっかりしている。外門で予約のチェック、館内に入ってからは荷物検査と二重ドアによる防御が施されていた。大使は会議中ということで、しばしホールで待つことになったが、その間に大変興味深い話を耳にすることができた。
以前テレビの特番でロシアの港湾都市のマンホールに暮らすたくましいストリート・チルドレンの話を見たことがあるが、近年はロシアの景気回復に伴い、めっきりその姿を見かけなくなったという。同じくモンゴルのウランバートルでも多くのストリート・チルドレンが存在したそうであるが、こちらもこのところすっかりその姿を消しているという。
親か親族のもとへ身を寄せるか、自ら職を見つけて移動したならよいが、その可能性はあまりないという。そもそも親から見捨てられた存在である。
そこでささやかれている話が、近年中国で盛んになっている、外国人や金持ちを対象にした〝臓器ビジネス〟との関わりである。通常、臓器の移植手術を行うには費用もさることながら、血液型、体質の適合(拒否反応の有無)した個体を入手しなくてならず、運が良くても1~2年、時には何年も待つうちに命をなくすこともある。
ところが、なぜか中国へ行けば、申請してしかるべきお金を払うと数ヶ月で手術まで辿り着けるという。「地獄の沙汰も金次第」ということなのだろうか? 臓器移植しか生存の道のない人でもお金を用意して中国へ行けば助かる道がある。中国の裏社会が臓器調達に関わっているというのである。身寄りがなく、いなくなっても捜索願いの出される可能性のないストリート・チルドレンを、中国の極道(蛇頭?)がかき集めて利用しているという。恐ろしい話であるが、地元では、治安対策にもなるとのことから人々のストリート・チルドレンへの関心は低いという。
先日TVの深夜番組を見ていたら、元シベリア抑留者の日本人で、当時モンゴルへ送られ強制労働に従事した友弘正雄さん(94歳)という方が出ておられた。友弘さんは自由化後にモンゴル慰霊の旅を続ける中でストリート・チルドレンの存在を知り、保護育成施設(孤児院)を作って、90人ほどの子供を育てたという。そういう人もいるのである。
中国では、思想犯や宗教問題で収監されている囚人から臓器の収奪が行われているという疑いがあり、先般、6月17日、イギリスで開かれた民衆法廷において「人道に反する罪で、中国は有罪である」という判決が出されている。民衆法廷とは、国際法上、あるいは人道的に問題があると思われる事件を有識者らが公開検証する模擬法廷のことである。強制権や「判決」の執行はできないものの、これまでイランやベトナム、北朝鮮などにおける人道犯罪を多く取り上げている。
ことに中国では、1980年代に処刑された囚人の臓器を一定の条件の下に使用できるという法律ができている。その後、この法律の下にウイグルの政治犯などが献体として使われ、問題となっている。中国政府は「市民の自主的なドナーである」と公表しているが、臓器手術を行える病院が大きな収容所の近くにあるケースも多く、疑惑の声が絶えないという。
事実、収容所では思想改造教育や拷問を行う一方で、血液検査、レントゲンなど、健康診断と称して内診を行い、献体を探しているという。
社会問題として取り上げられる前、中国ではウェブサイトで心臓、肺、肝臓などの臓器が事前予約のもとに販売されていたと言われる(現在は禁止されている)。しかし今でも国際常識では考えられないような期日で臓器の入手と手術ができるため、臓器ビジネスと裏社会の結びつきが今日も言われているのである。こうした事実を踏まえ、現在欧米各国では中国への「移植ツーリズム」の自粛、ならびに禁止の運動が始まっている。
関係はないかもしれないが、大使館のロビーにも誘拐に対する注意を喚起するチラシが他のチラシと共に置かれていた。
かつて中国では、出稼ぎで亡くなった人の遺体を国境を越えて移送する際、脳みそを抜き取り、空になった頭蓋骨に鼻から砂金を流し込んで密輸をしていたこともある。世の中には金になるならば何でもやる人々がいるのである。 (つづく)
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