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2018年2月12日 (月)

岡崎には文化が無い?

 先日、ある方から「岡崎は文化不毛の地であり、〝ジャズの街〟と言いながらライブハウスはほとんど無い」、「政策は役所主導で、ビッグネームや権威に頼ったものばかり」というお便りを頂きました。
 たまにはこういう辛口の御意見も刺激的で面白いと思いますが、できれば現実を正しく認識した上での意見であってほしいものです。
 ところで長年〝文化都市〟を標榜している岡崎に「文化が無い」というのは私は初めて耳にする意見であり、放置しておく訳にはまいりません。たぶん〝文化〟という言葉の定義に対する認識の違いの問題ではないかとも思います。

乙川

 岡崎は、大化の改新(645年)、飛鳥時代(白鳳時代)にはすでに壮麗な伽藍の並ぶ寺院があり、古くから交通の要衝として発展してきた長い歴史と文化のある地であります。14世紀に朝廷が南北に分かれて争った南北朝の動乱の口火が切られたのは、矢作川の両岸に対陣した軍兵達によってです。また、源頼朝の三回忌にまつわる仏像のある滝山寺があります。足利氏は尊氏の先祖、足利義氏の時代から岡崎に館をもち、鎌倉幕府四代将軍の藤原頼経も滞在したことがあります。
 江戸開幕以降、岡崎からは30家以上の大名が誕生しております。そして現在、日本の伝統文化と呼ばれているものの多くは、徳川家康とその家臣団によって開発された江戸において始まり発展したものであります。その徳川家と家臣団(他の地においては殿様)にまつわる数多くの文物があるのがこの岡崎ですし、全国でも有数の神社仏閣の数を誇ります(京都よりも多い)。そうした事実を数え上げただけでも「文化が無い」とは言えないはずです。

 また岡崎は古くから芸所としても有名であり、今も踊りや小唄等のお師匠さんもたくさんみえます。洋楽においてもクラシックのみならず、ポピュラー・ミュージック界で活躍してみえる方を多く輩出していますし、地元で後進の指導に尽力して下さる方も少なくありません。そのおかげで小中学生の合唱・吹奏楽・オーケストラのレベルも高く毎年全国大会へ出場し、上位入賞を果たしています。(Beanzz、ビーンズという子供ジャズバンドもあります。)

りぶらジャズオーケストラJr.岡崎 Beanzz

(りぶらジャズオーケストラJr.岡崎 Beanzz)

 岡崎高校のコーラス部はヨーロッパで行われる世界合唱大会で何度も金メダルを獲得しております。ちなみに5大会連続で金メダル、そのうち3回は世界チャンピオンであります。
 光ヶ丘女子高校のダンス、合唱も全国レベルの活躍をしておりますし、愛産大三河高校のアーチェリー部や城西高校のサッカー部も有名です。その他にも素晴らしい成果を出している学校や団体所属のオリンピック候補級の選手もたくさんいます。
 ついでに言わせて頂くと、学力の方も大したもので、毎年の全国学力・学習状況調査で、愛知県は全国ランクの上位ではありませんが、岡崎の小中学生の学力は全国平均よりも高い水準にあります。(この統計は人口の多い所が不利。)
 岡崎市芸術祭に出展される絵画、彫刻、その他の分野についてもレベルの高さに毎回驚かされます。秋には各学区において文化祭が行われていますが、こちらも一般の方々の作品の洗練度にびっくりさせられてばかりです。

 岡崎市はトヨタ系の会社の重役の方が多く在住してみえます。また、銀行や証券会社、生保などの支店長として全国を回ってみえた方で、土地を岡崎に確保しておいて、退職と同時に新築して岡崎に住まわれた方を何人も知っております。歴史的文化遺産に加えて、自然も豊かで、生活基盤や各種施設も整っているということもあると思いますが、それらの皆さんの多くが岡崎を居住地として選ばれた理由に「伝統文化の魅力と居住環境の良さ」を挙げています。「岡崎には文化が無い」という言葉がどこから出てくるものか全く分かりません。国立の研究所(自然科学研究機構)が岡崎に来たのも同様の理由であります。

自然科学研究機構

(自然科学研究機構・山手キャンパス)

 ジャズについて言うならば、「岡崎をジャズの街に」というのは決して役所からの発想ではありません。日本のジャズの育ての親の一人として有名なドクター・ジャズこと故・内田修先生(御近所でしたが親戚ではありません)の存在は言うまでもなく、ポピュラー・ミュージックとしてジャズを楽しもうとするグループ等、様々な形でジャズに取り組んでみえる方達がおられます。
 「岡崎ジャズストリート」については、市内で会社経営をしてみえた故・同前慎治さん(兵庫県出身)という方が市内のジャズ愛好家の方達と共に10数年前に民間の立場で自主的に始められたものです。岡崎市は街の活性化の観点から補助をしてきたというのが今日までの実態であります。

岡崎ジャズストリート座談会

(岡崎ジャズストリート座談会。『リバ!』2006年10月号より)

 ジャズに限らず、こうした趣味的要素の強い文化イベントに、公共が主体的に取り組むべきものではありませんし(同様のモノが他にもあるので)、また、役人が仕事として行っても良い結果は期待できません。(第一、面白いものになりそうな気がしません。)
 私も毎年、秋のジャズストリートには積極的に参加し、協力しておりますが、普段は引きこもり型のジャズ・ファンであり、一人でCDを聴いている方が好みでありますし、それで構わないと思っております。
 ライブハウスに行く、行かないは個人的趣味の問題でありますし、ライブハウスが流行らないとしても、それは行政施策の結果ではありません。そうしたことをもって、一方的に「岡崎に文化が無い」と言うのは、あまりに短絡的ではないでしょうか?

 世の中というものは、様々に多様な価値観で形造られたモザイクのようなものだろうと考えております。私はそうした多様性と伝統文化の共存する岡崎という街をこれからも大切に育ててゆきたいと思います。
 まずは「モノづくり」で豊かさを獲得した岡崎市に、もう一つの経済の柱として、歴史的資産、伝統文化と豊かな自然を活かした「観光産業」を付け加えたいと考えております。さらに言うならば、観光客ばかりでなく、市民にとってもきれいになった自らのふるさとの街を四季の景観を愛でながら歩くだけでも気分が良くなります。そして市民の多くが歩くことを習慣にして頂くようになれば、健康な人が増え、医療費の削減にもつながります。(認知症対策にもなる。)
 元気であってこその長寿であり、幸せな人生だと考えます。岡崎がそうした所になるようにガンバりたいと思っております。

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