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2017年12月16日 (土)

第3回リノベーションスクール@岡崎

第3回リノベーションスクール@岡崎

 新たなまちづくりとにぎわいの創出につながる実証実験である「リノベーションスクール@岡崎」(12月1日~3日)に出席した。このプロジェクトは学生を含む、まちづくりに関心を持っている方達にチーム(ユニット)を組んでもらい、具体的なアイデアを提案して頂く試みであり、今回で第3回目を迎えた。
 これまでもすばらしい提案がいくつも生まれ、「岡崎家守構想」(地主・家主から土地・建物を借り受け利益を生む運用や、質の高いビジネスを民間事業者に指導するシステム)に掲げる家守を通じて、乙川リバーフロント地区にいくつもの出店が実現し、まちの活性化に効果を発揮している。

 今回は15人の参加者をA、B、二つのユニットに分けて、具体的な駐車場、空きビルを使って効果的な利用方法を自ら考え出し、その事業計画を物件オーナーや市民の前で発表(プレゼンテーション)してもらうものである。肝心なことは、単なる夢の提案ではなく、そのプラン実現のための予算案、資金繰りの方法、事業計画と見通し、借入金の返済計画まで含めた地主・オーナーへの対応なども具体的に説明しなくてはならないことである。

第3回リノベーションスクール@岡崎

 市民対話集会で頂く意見や、時にプロの議員の発言においてでさえ、個人的な思いや自分の趣味的願望(失礼!)かと思われるような、法律や行政(国・県・市)の仕組み、採算性を無視した提案がみられることがある。しかしここではそうした提案は、専門家(大学・研究所の先生方、都市計画・まちづくりのプランナー、全国の実践者)の厳しい評価を受けることとなる。


ユニットA: 篭田エリア駐車場群

第3回リノベーションスクール@岡崎

 ユニットAのチーム(7名)は、籠田町にある駐車場が個人所有の土地に小分割された非効率的なものである現状に着目し、これを一括管理するプランを立てた。
 壁やフェンスをとり除き、大区画の駐車場として効率運用することで駐車台数を増やし、さらに余剰地を活用して、ユニークな露店を運用したり、立体的なオープン・カフェを展開して、まちの活性化を目指し、そこから利益を生み出そうとするものであった。

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ユニットB: 貝吹邸(連尺通り)

第3回リノベーションスクール@岡崎

 ユニットBのチーム(8名)は、連尺通りに面した3階建ての古いビルを対象物件とした。
 京都の町屋のように間口が狭く(3.6メートル)、奥の長い(23メートル)ビルを活用して、民泊的な小ホテルとして再生しようとする試みであった。

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 1階は、南側がホテルの入口となっており、カウンターの受付がある。ここは夜になるとカウンター・バーも兼ねる場となる。反対側の北口には、近年都市部で好評のコインランドリーと自動販売機によるカフェが併設されることになる。
 2階と3階は、個々の部屋がそれぞれ木調の部屋、ジャズの部屋、テクノ・ルーム(未来の部屋)、自然の部屋という個性的なテーマを持った仕様で整備される。
 3階の部分には管理者の部屋と長期滞在者を想定したテラス庭付きの広い部屋が用意されている。どの部屋もただ泊まるだけではなく、利用者が滞在を楽しめる空間であり、「もう一度岡崎へ行ってみたい」と思わせるリピーターを意識したものとなっている。料金も一泊8,000円(長期滞在は別)と良心的な設定である。今後はこうした複合的な要素をもった個性的な施設が増えてくるような気がしている。

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 後の講評において、「地域の活性化というものは一つ流れができると、続いて面白い考えを持った人達が集まってくるものです」という言葉がスクールマスターの西村浩さんからあり、我が意を得たりと思っている。
 空き地、空き家が増え、将来さらなる人口減少と高齢化が心配されている地方都市において、こうした知恵を活用した土地・施設の有効活用を進めることが「ものづくり」だけに頼らない、多様な経済の柱を持った「観光産業都市・岡崎」への第一歩となることを確信したものである。
 最後に先生方の講評と修了証の授与が行われ、私も閉校の挨拶を行いましたので以下に記すこととします。


閉校挨拶
 皆さん、こんにちは。市長の内田です。
 受講生の皆さん、3日間お疲れ様でした。自ら事業計画を立て、より魅力的に伝わるようプレゼンを練り、さらに公開の場を磨き上げるということを、短期間にこなすという厳しい日程であったと思いますが、それぞれ魅力ある提案になったと感じております。
 また、今回のスクールに対しまして、実際の物件を扱うことに御了解いただきました不動産オーナーの方々におかれましても、御理解と御協力を賜りましたことを、厚く御礼申し上げます。

 このリノベーションまちづくりでは、現在活用されていない空き店舗や空き地などの利活用を考えることで、事業者も地域も潤う形を見つけることができます。ただの空き物件の活用ではなく、都市経営の課題を複合的に解決できるという、すばらしい取り組みだと思っております。
 今回の提案も事業化に向けてすぐに動き出せそうな内容であり、皆様方の意欲と熱意が伝わる内容であり、うれしく思っております。
 ことに地元に住んでいる私たちは長年同じ風景を見ているはずですが、毎日見ていると当たり前のことになっていまい、逆に問題点に気がつかないということがあります。今回そうした「気づき」の機会を与えてくれた点はすばらしく、かつ若い人達の斬新なアイデアに驚かされました。
 現在岡崎市では東岡崎駅周辺整備を含め、人道橋と河川敷の整備による乙川リバーフロント計画と共に、中央緑道から籠田公園周辺、そして康生地区から「りぶら」につながる「QURUWA(くるわ)構想」に基づいた整備を進めております。

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(「めぐる、QURUWA」。2017年10月28日開催)

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(りぶら前のプロムナードで行われた社会実験)

 さらに「モノづくり」に続く新たな経済の柱として観光産業の育成を目指し、歩いても自転車や車で訪れても楽しいまちづくりを行っております。地域の魅力を向上させるためには個々の事業者の御協力が不可欠となります。本市としても引き続きこうした新しい試みを支援して参りますので、よろしくお願い申し上げます。

 全国的に地方都市の財政難と人口減少が言われる中、この地域は自動車・機械産業の好調なおかげにより全国屈指の豊かさと人口増を続けております。この岡崎市もあと10年程は人口増が続き、現在の38万6000人から42~3万まで人口が伸び、その後は漸減してくると言われております。人口が増えるばかりが良いこととは思いませんが、私は岡崎市の面積、地勢、経済的能力の伸長ということを考えた時、将来的に人口50万人位の都市として安定した街にしたいと思っております。ある程度の人口がなくては財政状況が悪くなりますし、地域の活力も落ちます。そうかといって「小さな東京」のような街にはしたくありません。
 現在大都市では時の風による「大衆扇動型の選挙・政治」が主流となっていますが、そうした政治は揺れ幅が大きいものの、実りの少ない結果を招くことになりがちです。しっかりと地域住民との対話を重ね、「顔の見える民主主義」を行っていくためには50万人くらいが適正人口であると考えます。岡崎はそれが実現できる都市であると思います。
 これからもそうした考え方のもと、さらに魅力的なまちづくりに取り組んでゆきますので、一層の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 最後に皆様方の取り組みが花開き、さらに街に賑わいが生まれ、そしてこうしたリノベーションの輪が全国に広がってゆきますことを期待し、閉校の挨拶と致します。参加者の皆さん、3日間本当に御苦労様でした。ありがとうございます。

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