若き家康公像の制作に思う
12月末、岐阜にある神戸峰男(かんべ みねお)先生のアトリエを訪れた。若き家康公像の制作が着々と進んでいることが確かめられ満足であった。
今回の家康公像制作のために神戸先生は新しくアトリエを増築されている。「日本一の騎馬像を造る」という決意が感じられて、感謝の念でいっぱいである。
完成時には高さ3メートルの台座の上に、等身の1.5倍の騎馬像が屹立することとなり、高さ・大きさ共に日本一の騎馬像が誕生することとなる。試作の10分の1サイズと比べ、今回拝見した3分の1サイズのモデルは格段に写実的な出来栄えであり、春頃には実物の制作に入られるそうである。
使用する粘土はイタリアのフィレンツェ産の土をオリーブオイルで練ったもので、3トンほどの粘土を使うという。支柱として使う木は地元、南木曽のヒノキだそうである。造り始めると作業台の高さも5メートル以上になるそうだ。時には夜中まで仕事に集中することがあり、作家の中には作業に没頭しすぎて落下死した方もあるという。神戸先生には、とにかく安全に制作して頂きたいと思っている。
この事業は、市民の皆さんからの浄財(寄附金)を使って、東岡崎駅の北東街区に徳川家康公の騎馬像を設置するというものである。桶狭間の敗戦により岡崎への帰還を果たした松平元康が徳川家康と改名した25歳当時の若き日の姿を再現し、ピンチをチャンスに転換し、天下統一と平和な世の中を作り上げた郷土の英雄の姿から「困難に立ち向かい、人生を切り開いてゆく」精神を子供達に学んでほしいと願うものである。
正式な募金活動はまだ昨年4月に始めたばかりであるが、商工会議所の前会頭はじめ、岡崎信用金庫、その他多くの企業や篤志家の方々の熱い思いを込めた御寄附が続いている。目標額は設置費の半分ということであったが、このペースでゆくと全額寄附金でまかなえるかもしれない。本当に岡崎市民の皆さんは愛郷心の強い方々が多く、今更ながらに感謝申し上げるものである。
おととしの11月、家康公四百年祭のシンポジウム〝徳川創業期を支えた家康公と家臣団〟の折に、徳川18代の德川恒孝(つねなり)様も「このような企画の催しを行えるのは、全国でも岡崎くらいですよ」とおっしゃってみえた。
岡崎独自の歴史、文化、伝統という切り口で真心をこめて訴えかけてゆくと必ずそれに応えて頂ける岡崎市民の皆さんには、どんなに感謝しても余りある。私達もこうした市民の御厚情に甘えるばかりでなく、善意の心にしっかりと応える仕事をしなくてはならないと思っている。
しかし世の中には明があれば暗がある如く、物事を素直に受け止め協力して下さる方もあれば、何につけても足を引っ張ろうとする人もいるものである。
岡崎の歴史を考え、多くの岡崎市民の期待感を見るにつけても、とっくの昔に設置されて然るべき、史実に基づいた〝若き日の家康公像〟の建設を「ムダ使い」であるとか「形を変えた政治献金か」などと揶揄する人もいる。こうした何事もゆがんだ目でしかモノを見られないかわいそうな人達も世の中にはいるのである。
また、私は先頃小さな子供さんがお母さんの助けを借りて十円玉を募金箱に入れている姿を見たことがあるが、「そうした金額が少ない」とバカにする貧しい心の持ち主もいるのである。
今回私達が試みている寄附金による事業というのは、決して個々の寄附金の多寡を競うものではなく、一人でも多くの市民の参加を願って行うものなのである。仮に一人でも5千万円寄附すれば5千万円になり、300人でも一人10円なら3000円にしかならない。そんな計算もできないのだろうか? また私は一部の集団のように半強制的な募金のやり方は好まない。
たとえ一人一人の寄附が少額であっても〝自らも建設に関わったという参加意識〟や〝歴史を振り返る切っ掛けが愛郷心の醸成を促す〟ことに真の意味と価値があるのである。もっとも唯物的思想に凝り固まっている人々にそうしたデリケートな心の動きを期待することは無理なのかもしれない。
いずれにせよ、実際に若き家康公の騎馬像が完成すれば、そんな声も雲散霧消するものと思っている。単に観光のシンボルというだけでなく、入学試験やスポーツの試合に出かける子供達が東岡崎駅に向かう前に必勝の願いを込めてから出かけるような像となることも期待している。そしてこの像が明治維新以来、形成されてきたタヌキオヤジ的イメージを払拭して、新たな家康公の姿を現すものとなることを願っている。
ギリシア、ローマの例を持ち出すまでもなく、ブロンズ像は戦争さえなければ2000年以上残る。今後末永く、太平の世を現出した郷土の英傑の志を伝えてくれることであろう。
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