日本の国防と安全を支える人々
3月12日(木)、毎年恒例となっている、岡崎出身の自衛隊入隊予定者の激励会が市役所2階の会議室にて行われた。今回の入隊者は防衛医科大・防衛大への進学者を含めた16名であった。
まだ初々しい新卒の新自衛官候補達の顔が並んでいた。これから日本の安全と守りは若い彼らの世代の双肩にかかってゆくことになる訳であるが、私の子供よりも若い世代が入隊する時代を迎え、本当に時の経過の早さというものを痛感している。
3月11日にはあの東日本大震災から四年目を迎え、また昨年は広島の豪雨災害や御嶽山の噴火災害があったばかりであり、自衛隊の力を借りずには救援活動が成り立たない大きな自然災害が、このところ頻発している。本来は、こうした活動の機会がないことが理想であるが、現実に幅広い活動に従事し、国家、国民の平和と安全を守っている自衛隊には心から敬意を表するものである。
この日、来賓としておみえになった自衛隊愛知地方協力本部長の市川文一氏は陸上自衛隊の所属であるが、偶然にも葵中学校出身の現・海上自衛隊教育航空集団司令官の池太郎氏と、防衛大の同期ということであった。以前ブログで述べたように、昨年1月、池さんはタニザワフーズ社長の谷澤憲良さんの紹介で市役所に御挨拶にみえたことがある。
池さんは昨年12月、海上自衛隊幹部候補生学校長の任を終え、海将(昔の中将)に昇進され、前述の教育航空集団の司令官となられた。そして、2月9日、再び市役所まで御挨拶にみえたところである。
最近はこうしたことに関心のある人は少なくなり、マスコミも取り上げない時代となっているが、昔ならば海軍中将が地元から誕生すれば、提灯行列を行って大祝賀会を開催するところである。時代と社会のあり方も異なっているため同一に論じることはできないが、いずれにせよ、我が岡崎からこうした人物を輩出したことを誇りに思うものである。
池さんは相変わらずおだやかな物腰であったが、的確に日本の置かれている国際情勢を分析された。
その中で、この20年ほどの間に、隣国・中国の経済的、軍事的発展は目覚ましく、それに伴って政治的発言力も増大してきていることを指摘された。
私は20年ほど前、地元新聞紙上に中国視察のレポートを書いたことがあった。当時の中国の指導者が軍関係者に対して、孫子の兵法を引用して「我が国はしばらく忍耐の時であり、まず外国の力を利用して経済的な力をつけ、軍事的な準備が整った段階で対外交渉に向かう」と言ったことを記した米誌の記事について、書いたことをお話すると、にこやかに笑ってうなずいてみえた。
私は直接防衛に関わる必要のないところで勝手なことを言っている立場であるが、池さんはじめ現職自衛官の皆さんは一旦ことが起こった時には「まった無し」で具体的な対応に出なくてはらない立場にある。そしてその結果は直接我々国民の安全・安心に関わってくる。本当に重責の職務である。
我が国特有の「お気楽平和主義」に染まっている一部の人達は、「そうならないように外交努力をすべきである」という建前論を述べるばかりであるが、危機的状況というものは相対立する利害関係が話し合いで解決できなかった時に発生するものである。現代のように複雑な国際環境において、すべて話し合いで解決することができると思っているとすれば、恐れ入るばかりである。そうしてもう一つ忘れてはいけないことは、こうした人達を生み出した根本はアメリカの戦後対日占領政策にあるということである(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)。
政治的決着の中には、一見、話し合いで解決したかに見えるケースであっても、その裏には武力や経済力を背景とした圧力や恫喝というものが存在するというのが現実の国際政治の実相である。であるからこそ、中国が経済力と軍事力の強化に懸命となっている理由ははっきりしているのである。
日本も同じ土俵に上がって勝負ができる軍事力を持てと言う気はないが、うかつに手出しができないと相手に思わせるだけの軍事的な備えと心構えだけはしっかりと持つ必要があると考えている。先の二つの大戦の教訓からも、戦争が起こる時というのは軍備が拡張された時ではなく、軍事バランスが崩れた時であるということを忘れてはならない。
昨今の中国の政府の言動を見ている限り、力によって自国の国際的地位を高め、国境を拡張しようと図っていることは明らかであり、楽観主義は禁物であると考える。あえて中国の立場になって考えるならば、中華帝国(王朝)の華やかなりし頃は、中国の馬の征(ゆ)くところ、中国の船の赴くところ、すべて中国の領土領海であったと考えていたのであるから、西欧的基準でいくら日本が国際条約を盾(たて)にものを言ったところで、それをかの国が認めようとしないのは当然のことであろう。
そうしたことを念頭において中国に対応していかないと、将来、禍根を残すことになると心配している。
さらに言うならばアメリカですら「いつまで日本の味方であるか」ということを考えておかなくてはらない。すなわち国際関係において「みんなお友達」はありえないのである。いみじくも、かつて第二次世界大戦前にイギリス首相ウィンストン・チャーチルが新聞記者を前に語った「仮想敵国とは、我が英連邦以外の国のことである」という言葉を、今改めてかみしめる必要があると思っている。
とはいえ、日本と中国は一衣帯水、日本海を隔ててお隣同士の関係にあり、嫌だからと言って引っ越すわけにもいかない。国家的見地からは、厳しく油断の無い姿勢が必要とされるけれども、私共、地方自治体としては、そうした国家間のギクシャクした関係を補う意味でもこれからも様々な民間交流、文化交流を深めてゆくべきであると考えている。
先日の桜まつりの折(4月4日)、中国浙江省の高名な書家・盧歩東氏の書道展が岡崎信用金庫の主催で行われた。また、同日、駐名古屋中華人民共和国総領事館の華僑華人花見ツアーが本市で行われ、私も挨拶に出かけた。
そういった点から岡崎は個別の国際親善活動をよくやっている自治体であると言える。三つの海外の姉妹都市(ウッデバラ市、ニューポートビーチ市、フフホト市)との交流も毎年継続している。
いずれにしても外交関係というものは、様々なチャンネルを通して複層的に形成していくことが、両国にとって一番の安全弁となるものと考えている。これからもそうした努力を続けたいと思う。
江田島・海軍兵学校、海上自衛隊の池太郎校長 1 (2014.03.07)
江田島・海軍兵学校、海上自衛隊の池太郎校長 2 (2014.03.10)
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