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2014年12月24日 (水)

ティラノ、東公園に見参!

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 この12月、待たれていた実物大恐竜のうち、ティラノサウルス(体長12m、高さ4.5m)が第一陣として東公園のこども動物園南に搬入されて来た。
 これまで何度も記してきたことであるが、これはさる郷土愛にあふれる篤志家(とくしか)の寄贈によって実現したプランである。いくつものパーツに分割して製作されたものを組み立てて成形しているため、作業を経て、このクリスマス・イブから全身の姿を外から眺められるようになった。

 残りの4体、ブラキオサウルス(体長18m、高さ14m)、プテラノドンと巣(1.5m)、トリケラトプス・ヤング(体長2m)、おやすみトリケラベビー(体長1m)は来年の3月までに順次搬入され、同様に組み立て、成形、設置されることとなっている。
 そして3月末には5体そろって、オープニング・セレモニーを行う予定である。その頃には囲いをすべてはずした状態で御覧頂ける。それまでは設置工事や周辺整備の必要から、全景を見ることはできないし、場内への入場も制限されることになる。どうかその点御容赦願いたい。

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 12月19日(金)、他の用事のついでに、工事の途中経過を確認すべく東公園に立ち寄ってみた。前日、岡崎としては珍しい大雪が降り、周囲にはまだ残雪があった。気温が5度以下になると接合剤が固まりにくくなるという悪条件のもと、株式会社ココロの製作担当者の皆さんはがんばって作業を続けており、頭の下がる思いであった。
 外周を白いカバーでおおった工事現場(?)では、全身を鉄パイプの格子ではさまれたような形でティラノが屹立していた。まるで映画『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の捕らわれた恐竜のようにも見えた。

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 間近で見る作品は、さすが製作者の技術力と誇りをかけた渾身の傑作であることがうかがえる。表皮のウロコの一つ一つを見ても、ていねいに造り上げられており、足場階段をのぼった二階から見る目玉は毛細血管までが精密に表現されている。位置が高すぎて一般公開時にはおそらく人の目に触れることもないだろうが、歯の一本一本もリアルに塗り分けられており、その表面にはステーキナイフ状の細かい刻みまでつけられていた点には一種の感動すら覚えてしまった。これぞ肉食恐竜の王者の再現である。

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 先日、工事経過を見たある専門家の方が「これを屋外展示するのですか? もったいないですネ」と言っておられた。(しかもタダでお見せするのである。)
 屋外展示をすれば、自然の風雨にさらされ、四季の温度差と太陽光による色の退色や素材の劣化も心配される。当然定期的な補修も必要となるだろう。
 しかし、それでも自然の情景の中にたたずむリアルな恐竜の姿を再現し、子供達に見せたいのである。そこで生まれた感動が、必ずや未来の創造性を生むものと信じるからである。

 全身を様々な角度から見直して、色々と質問をした。もしその場にいるのが男だけならばもう一つ聞きたいこともあったが、タマタマ女性の担当者もいたため、マタの機会とすることにした。

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 もし映画のようにDNAを活用した再生技術が進歩して、将来、本物のティラノを飼育できるようになったとしたら、展示スペース、獣舎、安全対策、エサ代などにいくらぐらいかかるだろうかと、ふと想像したくなるものである。エサ代だけでも、ゾウの比ではあるまい。
 ゾウと言えば、今回の工事が始まってから、周囲の状況の変化に気づいたゾウのふじ子が、何かを感じるのか工事初日はソワソワしていたそうだ。ゾウは頭の良い動物であり、牙をむいたティラノが前方に出現すれば、気がついて興奮する可能性もある。もちろん、そうしたこともふまえて、恐竜はなるべく視界に入らない所に後ろ向きに配置して、ふじ子には分からないように設置することにしている。

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 それにしても、化石の状態ではよく分からなかったことが、実物大の肉厚のある状態で目の前に現れると、具体的に様々なことが頭に浮かんでくる。体に比べきゃしゃで、人の腕くらいの大きさと言われていたティラノの前肢が、実は大人の太ももほどの大きさがあり、武器にはならずともけっこう役に立っていたように見受けられる。

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ヨコハマ恐竜展2014

 前方を向いた二つの目は、我々と同様目標物を立体的に目視でき、彼らが狩りを行っていた可能性も高い。口の大きさと歯の形状から、噛む力もアリゲーター(ワニ)の10倍の2~3トンというすさまじい力があったと思われ、やはりティラノは捕食者であったのではないだろうか? 体の大きさと6~7トンという体重から推定して、映画とは異なり時速18kmほどの走力と言われるティラノであるが、他の恐竜達のスピードはそれより劣るモノも多く、狩りのできる速度であったと思われる。しかも、近年の研究によれば、ティラノも集団生活をしていた可能性が高く、10歳代までの若いティラノならば成体の3分の1くらいの体重(2トン)であり、狩猟者として生存できる素早さは十分あったと思われる。
 ちなみにティラノの寿命は30歳前後と言われているが、巨大化した成体は自分の体を二足で支えることが難しくなり、肉食竜であるため、ケガや骨折をすることも多く、今回のティラノのように体長10メートル以上になるまで成育できる個体は全体の2%くらいであったとも言われている。

 話を元に戻すと、来訪者の良心を前提としてこのように貴重な作品を屋外展示するのである。できるだけ多くの皆さんに長く楽しんで頂けるように、どうか大切に接して下さい。
 防犯カメラも設置してあり、イタズラをした人にはしっかり弁償して頂くことになりますが、その必要のないことを望みます。

東公園(時計塔北側広場)

 最後に芸術作品を造るような意気込みで製作に当たって下さった(株)ココロの堀込さんはじめ各製作者の皆様、プランの実現においてリアリズムの追求を示唆して頂き、御指導を賜った福井県立恐竜博物館の竹内利寿館長さん、その他多くの善意のアドバイスと励ましの声を頂きました皆様に改めて感謝申し上げます。
 どうぞ3月の正式オープンを楽しみにして下さい。

株式会社ココロの皆さん

株式会社ココロの皆さん

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東公園(ティラノサウルス設置場所)

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3月完成へあと少し、恐竜製作現場報告 (2015.02.04)

東公園大恐竜・製作過程報告 (2014.11.08)

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