東公園大恐竜・製作過程報告
東公園に設置される恐竜達の製作状況の確認のため、このたび上京することとなった。これは贈呈者との約束であり、「製作途中に私が出来ばえを確認します」と申し上げたことによるものである。
来年3月末には、5体そろって市民の皆様にお披露目できる予定である。
東京都の西部、ほとんど埼玉との県境近くにある羽村市(はむらし)に、製作を依頼した「株式会社ココロ」の本社はある。岡崎から車で約3時間半の行程となる。
当日は担当課の職員4名も同行し、製造工程のチェックとともに、今後の搬送、設置、分解、移動、再設置となる手順や日程等の打ち合わせも行うことになっていた。以前記したとおり、当面子供動物園の南で展示を行うものであるが、あくまでこれは仮展示であり、最終的には、東名高速道路の東側の森林部でのジオラマ風の展示を目指している。
今後、順次、周回の遊歩道の整備と設置場所の基盤整備を行ってからの移動となるため、最終的な物語風の展示ができるのは、数年先の予定である。いずれにしても森林の自然景観をなるべく活かしたまま、森林に生息していた頃の恐竜達の生活の様子を再現しようという試みであり、子供はもちろん、大人の目にも十分楽しめる、学術的にも納得のゆく正統なものをつくり上げたいと考えている。
私達の訪れた(株)ココロでは、担当の女性職員、社長さん共々お迎えを頂いた。最初に組み立て途中のティラノサウルスの様子を見ることとなったが、工場に入ってすぐの場所に、頑丈そうな鉄骨でつくられた脚部を現した勇姿があった。
目玉は入れられているものの、まだ歯が入っていないため、入れ歯をはずしたお婆さんのような感じがしなくもなかった。それでもすでに頭部、胴体、尻尾の全体は組み立てられており、両手と足の指の先端部に爪が取り付けられたら今にも動き出しそうな雰囲気が漂っていた。モニュメントであっても、2~3トンの重量があり(本物の半分くらい)、肉厚のある5メートルの高さの肉食恐竜は迫力十分である。
この会社で製作しているのは恐竜ばかりでなく、先のヨコハマ恐竜展にも登場した動くロボット恐竜はじめ、各種ロボット、博物館展示用の動物像、映画の特撮用の特殊マスクなど、実に多用途にわたる製品がつくられている。
本社ビルの4階にある応接室に入る前に私達を迎えてくれたのは、人型の女性ロボットであり、簡単に会社と製品についてのガイドをしてくれた。愛知万博の時の案内役ロボットよりまた数段レベルアップしたタイプであり、空気圧式で動きもスムーズで、首筋や手首に青みがかかった静脈血管がうっすらと透けて見えるところまで凝った造りとなっていた。
思わず手の甲に触れてみたが、シリコン系の樹脂で形成されているのかプヨプヨと柔らかく、これで体温があったら人と間違えそうである。私が手に触れた直後に彼女から返ってきた言葉が「ロボットだと思ってやたらと触ればセクハラよ」であったのには恐れ入った。
応接室で資料説明を受けた後に、現場見学を行った。工房となっている場所は1階の奥にあり、プラモデルの部品のように各部に分割形成されていた。それぞれの部品は、正確にコンピューター作図された図面を元に、おのおの決められた大きさの発泡スチロールから彫り出される。原型の彫刻が終わると、表面をガラス繊維シートとFRP樹脂で塗り固めてゆく。次に表装に細かい鱗(うろこ)がスタンプ式にゲル状の樹脂で一つ一つていねいに付けられる。体長12メートルもあるティラノの全身にわたってこの作業を続けるのである。実に根気の要る仕事だ。この上に補強シートを貼り付け塗装をする。さらにその上にポリマー樹脂で汚れ防止の上塗りまで行うことになっているそうである。
工房内の様子はまるで芸術系の大学の研究室のようであった。ここで製作に携わってみえる皆さんも、ほとんど芸術大学で造形の部門を専攻してみえた方々だそうである。そして今回の岡崎の恐竜ほど「細部にまでこだわってつくった恐竜はない」そうである。
現場には製作中のティラノの脚部やトリケラトプス(角竜)の子供の造形、プテラノドン(翼竜)の発泡スチロールの切り出しが置いてあった。別室には一本一本、手造りで削り出され着色されている、数十本の恐竜の歯が並んでいた。(この形と色と大きさで子供のオミヤゲ・アメやアイスキャンディーが作れないものかとフト思ったものである。)
ブラキオサウルス(竜脚類)は、本社から車で15分ほどの所に別の倉庫を借りてつくられていた。高さ14メートル、全長25メートルの巨体が各ブロックごとに個分けされてつくられており、一見しただけでは、どこの部位だか素人には見分けがつかない。こちらも中心部は鉄骨で組み立てられる。「私も完成体を見るのが楽しみです」と担当の木戸さんも言ってみえた。彼女も恐竜が好きでこの会社に入ったそうである。
でき上がった恐竜達や恐竜の森を見て、子供達が学術的な興味を持つことも大切であるが、関心が造形や映像的な分野に向き、芸術的な発想につながっていくことも楽しみである。
何十年か後に、それぞれの分野で第一人者となった岡崎っ子達が「発想の始まりは東公園の恐竜です」と言ってくれるような素晴らしいものをぜひ完成させたいと思っている。 (つづく)
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