ネコは気ままに
最近どういう訳か、満16歳を迎えた婆さんネコ・ミーが、私を夜中に何回も起こしに来るため非常に迷惑している。それも決まって3時から6時にかけての、一番眠りの深くなるべき時間帯にである。
ネコ・ビスケットを山盛りにして置いておくと、他のネコに横取りされないようにまとめ食いをしようとするためか、吐き戻すことがある。(ウチには他に4匹のネコがいる。) 年をとったせいで若い頃のように消化できないのだろう。
いずれにせよ、仕事を終えて家に帰った時にはじめにすることが、ネコのゲロ片付けであることほどウンザリすることはない。臭いし、発見する頃にはガリガリに乾いてこびりついている。
じゅうたんの上で催されてはたまらないので、私の部屋はいたる所に新聞紙が敷きつめてある。そのため他人を招き入れることはできない。何か私に文句でもあるのか、二、三度、フトンの上に吐かれたことがあるが最悪である。洗ってもニオイはすぐにとれない。
以上の理由で、ミーには一日7~8回に分けて、少しずつエサを与えているのであるが、彼女にはそれが不満であるせいか、私の顔を見る度に「ミャーミャー」と名古屋弁で(?)エサをねだってくるのである。
また年をとってからの食欲には驚かされるものがある。若い頃よりエサ袋の消費が早いような気もする。ひょっとすると、老人ボケ(?)で食べたことを忘れているのかもと思うことがあるほどである。
どちらにせよ、かようなことで夜中に何回も起こされる方はたまったものではない。こちらも若い頃とは違って、夜中に一度起こされると次になかなか寝つけないのである。ことにこの傾向はこの夏頃からひどく、おかげでこのところ私は慢性の睡眠不足状態が続いている。
先方は元々夜行性の動物であり、朝私が出かける頃にはすやすやと寝ている。しかしこちらはそうはいかない。この話をすると「そんなネコ処分しちまえ」と言う人もいるが、生まれた時から面倒をみてきたネコであるし、厳しい女房と我がままな娘、気まぐれな次男にはさまれて暮らしている身としては、唯一の味方をなくす訳にはいかないのである。(すでに、最高の相棒であった愛犬はこの2月にこの世を去り、後任の犬は未だ私に慣れてくれないあり様である。)
他のネコはどうかと言えば、ボスネコ・キックは今年で4歳になる。現在もこの辺りを仕切っているらしい。子供の頃から野性味あふれる敏捷(びんしょう)なネコであり、犬をも恐れない根性を持ち、人間が制御できる範疇に収まらない生き方をしてきたため、歴戦の証しとして全身これキズだらけである。(耳も一部欠けている。)なでてやろうとしてさわったり、クシで毛をといてやったりする時に気をつけないと、キズに触れて逆に彼にかまれることがある。
おまけに度重なる戦いの結果のせいか、このところめっきり元気がなく歳より老けてみえる。奴もかつては車の音を怖がるかわいい子猫ちゃんであったのだ。
3年前に母猫とはぐれ、玄関先で情けない声で泣いていたキジトラの子猫であった虎男も、今ではすっかり大人のネコになり、態度もデカく、マイペースのニャン生を送っている。こいつはオスネコのくせに美形であり、そのおかげで我が家の五匹目のネコになりおおせたようなものである。今までも養子の話は何度もあったが、私と妻のお気に入りでもあり、娘のネコ達と一緒に育ったため娘もかわいがっており、そのままこの家にいついてしまった。子猫の頃は目のクマがもっとはっきりしており、「海老蔵」(エビゾー)と呼んでいた。
毎日「トラ君、人間がごはんを食べるからどいておくれ」と言ってもなかなかお気に入りのコタツ机の上から退去してくれず、机の角にしがみついたりもする。それでも彼を叩いたりはしない。やさしく抱き上げて別の場所に移し、強制執行は完了するのである。
二匹のメスネコは完全な家ネコとなっているのであるが、去勢手術をしていても、いずれのオスネコも室内飼いをしているにもかかわらず人の目を盗んで勝手に外に出て行ってしまう。どうやらオスネコの放浪癖というのは、すべてのオスに共通の本能に由来するものなのかもしれない。
虎男より2ヶ月ほど早く拾われたピー子とプースケは本来三匹の兄弟であった。発見された時にすでに衰弱していた一匹は助からなかった。彼らがウチに連れてこられた時、頭はピンポン玉くらいの大きさしかなかった。私は娘が拾ってきた時に「育てるのはムリだ」と言ったのだが、とうとう二匹を何度も病院に連れて行ったりして、育て上げてしまった。
そのため彼らは娘をゴッドマザーと思っているらしく、娘には絶対服従である。娘が遠くで呼んでもすっ飛んで行く。まるで犬のようなネコ達である。犬のようと言えば、プースケには投げたペットボトルのフタを投げた人のところに持ってくるという芸がある。(娘のケータイに動画がある。)
私は最初にその話を聞いた時、マサカと思ったが、私が投げても拾ってきた。しかも何度でも拾ってきて、こちらが止めようとすると肩に手を置いて「もっと遊んでくれ」というような仕草でおねだりまでするのである。
そうした様子を見ていたピー子も、いつしか綿棒を拾ってくるという妙な芸を身につけた。なぜ綿棒なのかは彼女に聞かないと分からない。私がゴミ箱に投げ捨てたものまで拾ってくるのには閉口した。この子は発育不全気味の子猫であったのだが、頭が良く世話好きの姉御肌のネコでもあり、自分より大きいプースケや虎男の毛づくろいをしてやったりしている。ちなみにピー子は覆面をしているような顔のため、「キャットウーマン」という別称を持っている。
こんな個性的なネコ達のおかげで、毎日家ではタイクツせず生活している私であります。皆さん動物にやさしくしてやりましょう。動物は裏切りません。
彼らは人間の心にやすらぎをもたらしてくれる天使なのかもしれませんよ。
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