ゆかりのまち・茅ヶ崎市 「浜降祭」
市長会のヨーロッパ視察から帰国し、平和祈念式典を催した日(7月19日)の翌日、昨年は公用と重なり訪れることがかなわなかった、ゆかりのまち・神奈川県茅ヶ崎市の「浜降祭」(はまおりさい)に参加すべく岡崎を出発した。
これで友好提携を結んでいる国内の都市の行事は、沖縄の石垣市の秋の行事を除いて、一通り御挨拶にうかがうことができたことになる。
日本には、様々に個性的な行事が各地に伝わっているが、この浜降祭も臨海地域の人々の伝統と生活、文化を体現した祭事であることがうかがえる。
浜降祭の由来については諸説あるようだが、大別すると次の二つが有力となる。
今から180年ほど前の天保9年(1893年)、寒川(さむかわ)神社の神輿(みこし)が、毎春行われる国府祭(こうのまち)の奉納の儀の帰りに相模川の渡し場で寒川の氏子と地元の氏子が争いを起こした際に川に落ち、行方不明になってしまった。ところがその数日後、南湖(なんご)の綱元である孫七さんが漁の最中に御神体を発見し、寒川神社に届けたことを機縁に、毎年同神社の神輿がお礼のため南湖の浜に赴き、「禊(みそぎ)」をするようになったと言い伝えられている。これが一つの説。
もう一つの説は、それよりも古い時代から鶴嶺八幡宮において、心身の罪けがれを清める「みそぎ」の神事として毎年浜辺へ渡御(とぎょ)を行っていたという記録がある。
いずれにしても、そうした、地域の伝承が後年に合体して今日の形となり伝わってきたものと考えられている。正式には明治9年(1876年)に、それまで旧暦の6月29日に行われていた神事を新暦の7月15日と定め、名称も〝浜降祭〟とし、さらに平成16年(2004年)からは7月の「海の日」(第三月曜日)に祭礼を行うことに変更し、今日に至っているという。
今では茅ヶ崎市・寒川町の各所の神社に集結したそれぞれの氏子達が、宴席をもった後にそれぞれの神輿を担いで、早朝の湘南海岸に集結してくるのである。当初私は2~3基の御神輿を担いで海に入って騒ぐお祭りぐらいのことを想像していたのであるが、各神社から集まってくる40基近くの神輿の隊列を見て大変驚かされたものだった。
各神輿にいくつも付けられた鈴と、横下に設置された西洋玄関の金属製の鳴子のような機具によって、ダンダンダン、ダンダンダンとリズムがきざまれる。そこに「どっこい、どっこい」と言うこの地方特有のかけ声が混ざり合い、老若男女に子供まで含めた数千人もの人々が浜辺に押し寄せてくる様子は実に壮観である。
すべての神輿が勢ぞろいして一線に収まるまでに2~3時間かかる。担ぎ手に“一杯”入っていることもあり、最後まで神輿を担いで廻るという男気もあいまって、なかなか神輿が収まらない。それでも朝7時には、なんとか一列に並んだ神輿の前でおごそかに神事と式典が行われることになる。各地元の代表者、来賓の名士に続き、私と新海議長も玉串奉典の列に着かせて頂いた。荒々しい海の祭典における、一時の静寂の間である。
その後、再び各神輿は海へ向かって進み、順番に水に入ってみそぎを行ってから、各地元の神社へ戻ってゆくのである。
一晩中担ぎ続けてきた神輿もあり、遠くの神社の方々はトラックに乗せて帰るということだった。しかしその後、地元の町内を夕方まで練り歩く神輿もあるそうである。
漁師町に始まった、この勇壮で伝統的な浜降祭は、今では〝暁の祭典〟という呼称と共に神奈川県の無形民俗文化財となっており一見の価値があると思われる。
現在50代の服部信明市長は、「私は今でも本当は担ぐ方が好きです」と言ってみえたけれど、これだけのお祭りを毎年整然と行うことはさぞや大変なことであろうと思う。また、酔っ払いにからまれながらも、丁寧な対応をしていた交通整理の警察官の姿にも本当に頭が下がる思いであった。
こうした伝統行事の継続には、地元の方々がそれぞれ愛郷心に燃え、地域の伝統文化を後世に守り伝えようとする姿勢がしっかりしているからこそ可能なことであろうと思う。
「さあ、次は岡崎の夏まつりである」
我々もガンバらねばと思っている。
浜降祭からの帰り道に海岸線を歩きながら、沖合いに見える「えぼし岩」と波のきらめきを見ていて、この町が海の若大将、加山雄三のふるさとであることを思い出した。
加山雄三は、小学生の私を海のスポーツと音楽へいざなってくれた恩人であるともいえる。そのことは岡崎と茅ヶ崎が名前が似ていること、大岡越前公をめぐるゆかりの町として両市が特別の関係にあることと同じぐらい、共にうれしいことである。もう少し若い人たちにとっては、えぼし岩と湘南の海と言えば、サザンオールスターズを思い出すことになるのかもしれない。桑田佳祐は茅ヶ崎出身である。
(こんなことを書いているとまた嫁さんに叱られそうである。)
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