「公約と政策の実施」について
民主主義の政治体制にある、あらゆる為政者を悩ませる課題が公約の優先順位というものである。
私も当選後一年を経過して、準備の整ったものから順番に公約を手がけてきた。予防医学の見地に立ったワクチン接種の推進や、私学の授業料補助はすでに実施している。また、市民の声をお聞きする市民対話集会の開催や目安箱の設置、民間活力を取り入れた政策を推進するための「岡崎活性化本部」の設置なども導入できた。
先日、12月議会で「小中学校の給食費無料化の公約が進んでいないのでは?」という御指摘を頂いた。この問題については担当部局から現況調査研究中である旨答弁したが、休憩時間に自室に戻った時に、改めて選挙用パンフレットの記述を確認した。
写真にもあるように、確かに私は「小中給食の無料化と私学助成の復活と拡大を目ざします」と記している。追記として「教育費の負担軽減ができる策を実現します」とも書いてある。
昨年市長に就任して間もなく、給食費の無料化について早速担当部局と協議に入ったことを覚えている。就任前に考えていたよりも大きな金額がかかるということと、こうした問題を推進するにあたっては、隣接する自治体への影響に対する考慮も必要であることを伝えられた。
現在、給食費の無料化を実施している自治体は、小規模の自治体であり、全国でも兵庫県の相生市と北海道の三笠市(小学校のみ)を除けば、比較的軽い財政負担で済む町村でいくつかあるのみである。中核市では群馬県の前橋市が第三子補助を行っている。多くの自治体がなかなか対応できない理由は、高額な出費が継年的に続くことになるからである。仮に岡崎市において無料化を実施した場合、毎年16億円が必要となる。
軽減措置を行っている県内の自治体は、半額補助は大口町のみで、大治町が月150円の補助、岩倉市は第三子の補助を行っている。これらを岡崎市で実施した場合、半額補助で年間約8億円、月600円補助で約2億2000万円、月150円補助で約5400万円がかかることになる。給食費補助も公約に掲げた一つであることは間違いないのであるから、現在、今期中には何らかの手立てをするつもりで部内検討をしている。ただ、公約の実施順位については、庁内におけるこれまでの政策優先順位のあり方もあるし、何よりも私自身の政策優先順位への考え方もある。
私は、政策推進のためには、まず税収の向上を企(はか)ることが必要であると考えている。岡崎の豊かさの基盤は「モノづくり」であり、モノづくりを重点政策とすることは今後も変わらない。しかし岡崎を活性化するためには、独自の伝統的文化遺産や川を中心とした自然環境を生かした観光産業について新たな試みをしなければならないと考えている。そうすることによって更に元気で魅力的な町にしたいと思っている。
具体的には八丁味噌等に加え北のブドウ狩り、南のイチゴに、去年からスタートした「岡崎まぜめん」も加え、伝統産業である石工の技も生かしてゆきたい。またジャズストリートで盛り上がっている「岡崎のジャズ」や、ゆるキャラの雄となった「オカザえもん」や「葵・武将隊」のパフォーマンスもとり入れ、新旧とりまぜた岡崎の魅力を総合的にアピールしたいと考えている。
現状の税収を割り振りするだけでは、おのずからできることに限界がある。分割するパイの総量自体を大きなものにしようとする発展のある試みこそ今必要であると考える。
金の卵を生むアヒルや打ち出の小ヅチをお持ちの政党ならいざ知らず、全体を見渡して責任ある政策を行おうという政党ならば、まず財源確保の算段から考えるものである。
もう一つの公約としてツインブリッジ建設の構想がある。各種会合や講演、HP、ブログなどで私は繰り返しこう述べてきた。
「まだ使える橋を壊してハデな橋を新しく造るということでは決してない。老朽化して危険な状態にあり、構造上の欠陥により水流も妨げられている橋を建て替えるというのである。その場合に併せて岡崎の伝統や文化を尊重した夢のある橋を造りたい」
何度も言ってきたことだが、未だに「ムダな政策」と言われることがある。ツインブリッジと名付けはしたが、県道に架かる橋の工事主体はあくまで県であり、リバーフロント整備は、国の補助金の対象になる。更に言うならば現在も毎日2~3万台の車が通過しているこの橋の橋脚には写真にあるように一目でそれと分かる大きな亀裂さえ見られるのである(クリックすると拡大します)。
もしこの橋が崩落して大きな被害が出たとしても「ムダな政策」と言えるのであろうか?
公共の事業は、予算の切り分けや経済政策としてのみ意図されているのではない。美しく豊かな自然景観の中で、市民がくつろぎ、伝統文化に触れる場にするためのものである。そして何より岡崎で生まれ育った子供達がふるさとに愛着を感じ、誇りを持ち、愛郷心を育むものであってほしいと考えている。私はそんな岡崎を市民と共に築き上げてゆきたいと思っている。
これから10年、20年と経過した折に「あの頃から岡崎は変わったんだよネ」と喜びをもって振り返って頂ける、そんな一年にしたいものである。
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