中核市サミット2013 in 下関
11月7日(木)から8日(金)にかけて、山口県下関市で〝中核市サミット〟が開かれた。このサミットはほぼ毎年この時期に行われ、今回で18回目を数える。岡崎市が中核市に移行したのは平成15年(2003年)4月1日なので、岡崎市はそれからの参加となる。
一口に「市」と言っても、日本の市は政令によって以下のように分類される。
・「政令指定都市」20市――人口50万以上が要件(大阪市、名古屋市など)
・「中核市」42市――人口30万以上で市独自の保健所を保有することが要件(豊橋市、豊田市など)(注)
・「特例市」40市――人口20万以上が要件(春日井市、一宮市など)
・「それ以外」687市――人口5万以上であることが市であることの要件
全国市長会というものもあるが、都市の規模、成立要件によって各地域の課題も当面の問題も異なるし、とりあえず人口区分で分類しないと議論がかみ合わないため、こうした区分でそれぞれの市長会が活動を行うことになったことと思う。
下関での「中核市サミット2013」には、38の中核市の市長と市議の代表者、随行の職員が出席している。初日には元内閣官房副長官・石原信雄氏の基調講演があり、「環境問題」、「行財政運営」、「防災対策」の三つの分科会に分かれ議論を重ねた。それぞれ各市の掲げる課題、対応、実績について実例をまじえて話を進め、相互に大変実り多いものであったと思う。各分科会での会議後の総会において、今サミットにおける以下三項目の下関宣言を採択した。
- 中核市は、地球温暖化対策における国と中核市の役割を明確にしながら、将来世代へ負担を押し付けることのない、持続可能な低炭素社会を実現するための取り組みを推進する(環境問題)
- 中核市は、厳しい財政状況下、公共施設を適切に管理運営し、住民サービスを安定的に提供していくため、中核市間の情報交換、情報共有を密にし、課題解決に向けた取り組みを推進する(行財政運営)
- 中核市は、自主防災組織の育成、強化に加え、学校教育における防災教育のあり方を考え、地域の自発的、主体的な防災・減災活動への取り組みを促進するとともに、相互連携のもと、災害に強いまちづくりを推進する(防災対策)
私たち中核市は、諸課題の解決を通じて、中核市の元気アップのみならず、日本全体の活性化に資するため、実効性のある地方分権を目指す先導者としての役割を十分認識し、「行動する中核市」として地域の声を広く発信していくことをここに宣言します。
平成25年11月7日 中核市市長一同
中核市42市にしぼって共通の課題を議論し、国に対して足並みを揃えて要望していこうというのが中核市サミットの本音であると思うが、実際はそれほど簡単ではない。都市の要件というのは人口や面積だけでは計れない多様な条件で成立している。それぞれの都市でも海岸線に位置するか、内陸部に位置するかでその課題は変わってくる。主要産業が第一次産業(農業、漁業、林業など)か否かによっても違ってくるし、何よりも財政が交付金に依存しているかどうかの差は大きい。ことに最後の要件は、都市間において水と油の関係となることもある。
ただでさえ都市部の自治体は国税の納付額が高い上に、2007年の福田政権の折、法人事業税の一部国税化がなされた。さらに現政権下では、来年4月の消費税8%化に合わせて、地方の重要な財源である法人住民税も一部国税化しようとの動きもある。
東京都や愛知県など税収の多い地域は、減収となるわけで、当然、上記の一部国税化については反対である。東京都、神奈川、愛知、大阪の4都府県は総務省に対し廃止の緊急要請書を提出している。
一方、国から交付金を受ける側の地域の自治体は増収となるわけだから、賛成である。
ただし、このところの国の予算執行に無駄がないとは言い難い面もある。平成23年度決算では、一般会計7030事業のうち、予算を50%以上消化しなかった事業が1129もあり、1兆1300億円が未執行となっている。ゆえに「そうした未執行の国費から地方格差の是正に充てるべきだ」というのが東京都をはじめとする大都市圏の主張である。平等をとるべきか。公正でゆくべきか。何やら個人の問題にも通ずるところがあるようである。
しかし議論を聞いていて、豊かな愛知県だからと言われるかもしれないが、「この国はいつから社会主義国になってしまったのだろうか?」と思わないでもなかった。
(注) その後、以下の6つの市が新たに加わり、現在の中核市の数は「48」となりました。
大阪府枚方市(平成26年4月1日)、埼玉県越谷市(平成27年4月1日)、東京都八王子市(同左)、広島県呉市(平成28年4月1日)、長崎県佐世保市(同左)、青森県八戸市(平成29年1月1日)。
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