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2013年10月22日 (火)

矢作神社・祭礼山車

矢作神社

 10月に入って早々、かねてより地元の田口市議より強く要請のあった、矢作町2区が所有する祭礼山車の視察に足を運んだ。
 この山車は江戸時代末期の作であり、岡崎市の指定文化財にも指定されている。前々から何回も話には聞き、よくある「地元自慢」の一つと思っていたが、間近に見る矢作町の山車は素人の私が見てもその違いを感じさせられるほど見事なものであった。写真で見ていた水引幕は、傷みの激しい部分を拡大して撮っていたためよく分からなかったが、実際の水引幕はレリーフ状に鳳凰や麒麟(きりん)が金糸、銀糸を織り交ぜた美しい刺しゅう造りとなっている。大分色あせてはいるが、手の込んだ織物であることは誰が見ても一目で分かるだろう。この水引幕については、広げるたびに糸が抜け落ちるほど傷みがひどいため、間もなく岡崎市美術博物館に寄託し、保存を図ることになっている。替わりに480万円ほどかけ、新調した水引幕を使用することになっている。まともに修復すると数千万円かかるそうである。

矢作神社

矢作神社

矢作神社

 山車本体もずいぶん凝った造りとなっている。正面は唐破風(からはふ)屋根が二重となっており、上屋根は上げ下げ可能となっている。下段の唐破風は箱段が設けてあり、そこにはなぜか牛若丸が鞍馬山で天狗と武道の修行に励んでいる彫刻がある。浄瑠璃姫と義経の逸話と何か関係があるのだろうかと考えさせられる。左右の2本の柱には、これまた「イナカの山車にかくも」(失礼)と思わされるほど手の込んだ昇り龍と降り龍の彫り物が施されている。また枡合(ますあい)には、お寺の仏壇にしてよいくらいの波に蛇身鳥(じゃしんちょう)一式の彫刻や金箔押二重の6本の柱まである。
 今回、他の山車の写真や資料を調べてみたが、山車を使ったお祭りを町興しの中心に据えている他都市と比べてみても(名前を出すと何かと支障があるのでここでは触れません)、決して見劣りしないどころか「こちらの方がスゴイ」と思わせるほどであることが分かった。
 かつて、こうした山車は岡崎市内に数多くあったが、現在では完全体として残っているものはわずかである。多くは曳き廻しに便利なように二階造りの山車の上部が取り去られてしまったものが多い。
 矢作地区においても、かつては矢作町南之切、東中之切、西中之切、上之切の4区それぞれ独自の山車を有していたが、個々の町の負担が大きくなり、内二つは他都市に売却されてしまった。現在では西中之切と東中之切の2台のみが残されている。

 確かにこうした文化財を一町で保存するというのは財政的にも大変なことである。地元の要望も大切にしながら、例えば岡崎市の方で預からせていただき、展示でもできないかと考えている。高山市の高山祭屋台会館ほどでないにしろ、常設展示できる場所を設ければ観光岡崎の一助となることだろう。一度ご覧頂ければ分かっていただけると思うが、矢作町の山車はそれくらい見事な芸術作品である。

矢作神社

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