中学生と語る「未来の岡崎」Ⅱ ―城北中学―
先回の南中学に続き、6月14日(金)、城北中学において2回目の「次の新しい岡崎」についての講演をさせて頂きました。
若い人と話す楽しさは、彼らが素直で率直なモノ言いをしてくれる点であると思います。大人は変な遠慮をしたり、余計な思惑が邪魔して本音を言わないことがあります。また思想的違い(モノ事の考え方の違い)から、自分と異なった考えを理解しようとせず、相手を攻撃し、誹謗中傷すること(悪口を言うこと)に生きがいを見出しているかわいそうな人達もいます。こうした大人達との対話は、しないよりした方がいいとは思いますが、時に、おこなったというだけであまり実りのあるものとならないこともあります。
思ったことを率直に述べてくれる若い人との対話は、一般の人の本音を推し量る意味でも大変参考になります。
城北中は私にとって母校であり、私が初代校長の鈴村正弘先生のスパルタ教育時代の卒業生であるせいか、もう何十年も経っているのに、この学校の正門をくぐるたび、なぜか今もって体が緊張感に包まれます。
また今回も講演後ほどなくして生徒さん達からの感想文集を頂き、大変参考になり、また心温まる思いがしました。ページをめくる度に個々の生徒の岡崎への思いが伝わってくるような気がしました。こうした機会を与えて下さった皆様に改めて心から感謝申し上げます。
しかし今回もまた、言葉の難しさということを痛感しました。初代校長のモットーが「勉強だけできてもダメだ、スポーツだけでもダメだ、両方できなくてはダメだ」というものであったため、「昔の城北中の伝統は?」という問いに対しその言葉を返したところ、どうやら私自身がそう思っていると受け取った生徒さんがたくさんいたようです。
私の考えとしては、初代校長はそういう高い目標を掲げてみえましたが、実際に「文武両道に秀でる」ということは誰しも簡単なことではなく、それはあくまで努力目標であると言いたかったのです。「人にはそれぞれ個性や特徴があり、そうしたものを活かした生き方を模索してもらいたい」というのが私の真意であります。それに我々の時代の常識やモットーを数十年後の現代にとりあげても、それは時代錯誤(時代に合わないこと)となってしまうことでしょう。これからはもっと丁寧なモノ言いをしなくてはいけないと反省しております。
講演後の質疑応答は、城北中の生真面目な伝統のせいか事前に伝えられた通りの政策的な質問が主であり、おおむね好意的なものでしたが、中には、「ツインブリッジやリバーフロントのような計画では名古屋に勝てない」という厳しいご意見も頂きました。全校生徒のそろったあのような場で、堂々と異論を述べた後輩の勇気と着眼点に頼もしいものを感じたものです。
しかし私としては、初めから名古屋と競争するつもりなど無く、ただ岡崎を中核市にふさわしい町にしたいと思い、あの計画を発表したのです。そもそも名古屋は230万都市であり、政令指定都市で、かつ県庁所在地であります。岡崎は中核市とはいえ人口38万。予算規模は名古屋は愛知県の半分近くもあり、大体毎年、岡崎市の約5倍です。岡崎が競争する相手としては大きすぎると思います。
またついでに言えば、名古屋市長の政策には、「尾張名古屋共和国構想」のように一都市ですべての施設を保持しようとするのではなく、尾張地域全体で施設計画や運営を考えて、共有できるものは共同使用して利用率も上げるという合理的なものもあります。しかし、中にはあまり賛成しかねるものもあります。
例えば「名古屋城・木造化計画」です。コンクリート造りとは言え、空調も効いたあの美しいお城を壊してまでやろうとする意味が私は分かりません。まだ耐用年数も耐震強度も大丈夫ですし、お城の解体費用だけで数十億円はかかるでしょう。これから木造で本格的に造るとすれば数百億円の建設費を要しますし、本格的にやればやるほど、資材の調達が大変ですし、何より建築基準法をどうやってクリアーするかも問題です。今まではエレベーターで上階まで上がれた高齢者や身障者、幼児も簡単には登城できなくなるでしょう。「はたして、そんなモノを大金をかけてまで造る必要があるのか?」というのが外から見ている私の意見です。大都市名古屋ですから、やる気になればできるでしょうし、寄付金も期待できるし、人も集まると思いますが、一度木造にした場合、維持管理の方も大変なお金がかかります。姫路城のように本物の歴史的遺産でもないのに、木造であるがゆえに定期補修費用もバカにならない額となるでしょう。あえて実施するならば、天守閣の最上階のみ木造化するとか、内装を木質化するという方法も考えられますが、将来市民の重荷にならないことを祈るばかりです。いずれにしても、それを選択するのは名古屋の市民です。
私としては、名古屋には東京や大阪、横浜に負けない都市づくりを目指してもらいたいと思っています。
では岡崎は何を目指すべきか? 岡崎が目指すべきは人口38万都市の身の丈(たけ)に合った都市づくり、施設整備であると考えます。そして近未来の50万都市・岡崎を念願に置いた各市域の実情に合った都市計画を立てることが必要であると考えます。そのために将来は、次のような事業が不可欠になってくると思っています。
(1)愛環鉄道と名鉄本線が交差する場所に総合駅としての「岡崎中央駅」(セントラル・ステーション)を建設する
(2)岡崎城を中核とする岡崎公園の周辺を、史実に基づいて城郭公園化する
もちろんこれは私一代でできることではありません。それともう一つ、新東名高速道の開通を考慮したまちづくりも重要なポイントであります。
そして講演でも申し上げましたが、岡崎には他の都市にはない歴史的価値の高い文化遺産がたくさんありながら、質実剛健の土地柄のゆえ、観光政策というものが派手で浮かれたイメージとしてとらえられ、今日まであまり重要視されてきませんでした。もともと実利的な「モノづくり」を重視してきた地域性もあり、今も自動車、機械産業がこの地域の中核であり、大きな成果も出ていることもあって観光産業育成に対する熱意は高まらなかったものと推測しております(そのためこれまで大きなホテルが市内にできなかったのです)。
もちろん、現在の岡崎の豊かさの源泉は「モノづくり」にある訳ですから、それをおろそかにはできません。これからもこの岡崎の産業特性である「モノづくり」にはしっかり力を込めて参ります。
しかし、岡崎各地にたくさんある徳川にまつわる歴史遺産をはじめ、古くからの歴史文化遺産を、まちづくりや新しい経済の柱として活用しない手はないと思います。このままでは宝の持ちぐされです。そうした新たな経済の柱となる「観光おかざき」づくりに向けての第一歩が今回、私の提唱する「ツインブリッジ計画」であり、国の「かわまちづくり推進事業」に連動した「リバーフロント構想」であります。時々「歴史観光などくだらない」という御意見の方とお会いすることがありますが、ほとんどの場合、岡崎の歴史や伝統、文化、地域的特性を十分理解されていない方が多いようです。
よその都市の成功例をマネしても、必ずしも岡崎に適しているとは限りません。岡崎市の特性、置かれている情況を踏まえ、市民の要請や投資効果も考慮に入れた上で、岡崎の持ち味を活かしたまちづくりを考えることが大切だと考えます。
そのための最大のキーポイントが「川」であります。市域を分断する川を、市民生活を豊かにするための空間として十二分に活用することが必要であります。それを「新しい岡崎」への第一歩として、次の段階へ進んでゆくべきと考えます。
こうした私の提案は、あくまで一つの基本プランにすぎません。これから岡崎活性化本部の専門家の皆さんも含め、多くの方々のアイデアを結集させて、より良い実施プランへ高めて参りたいと思っております。どうぞ積極的に御意見や計画案をお寄せ頂くことをお願い申し上げます。
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