グライダー試乗体験記
今回市役所内の体育協会事務局長のお誘いにより、「岡崎飛行クラブ」のグライダー試乗会に参加することとなった。
私と岡崎のグライダー・クラブとの縁は古く、県会議員になったばかりの頃まで遡る。当時矢作川の河川敷内にあったグライダー倉庫の存在が、国の行政管理庁の査察で問題となり、「立ち退き要求を受け困っている」という陳情をもらい、県や国会議員事務所などへの対応をしたことに始まる。メンバーに友達が何人もいたこともあり、陳情処理がきっかけとなり何度か試乗の誘いがあったが、日程の折り合いがつかず、そのままとなっていた。それが今回25年振りに実現することになったのだ。
もともと飛行機が好きで、高校2年生までは私もパイロット志望であった。近眼となってあきらめることになったが、航空関係のことには今も人一倍関心を持っている。家には「小型飛行機の免許のとり方」などという本も何冊かある。ちなみに高校時代の愛読書のひとつは、あの零戦撃墜王の書いた『坂井三郎空戦記録』である。この本はのちに『大空のサムライ』と改題され、映画にもなり、世界各国でベストセラーとなった。
ようやく長年の念願がかなうことになった当日(4月14日)は子供のように朝からワクワクしていた。私が機乗することになったグライダーはドイツ製の二人乗りで、JA20CD・シェンプ・ヒルト式デュオ・ディスカス型機という、白くスマートな機体である。(以前所有していたヨットの船体と同じ合成樹脂タッチだった。)
操縦者は千葉さんというトヨタ自動車に勤務してみえる方である。やはり若い頃はパイロット志望であったが、飛行学生への夢がかなわず、現在は車を造っているとのことであった。しかし空への夢は断ち難く、今もグライダーに乗ってみえる。どうもここらは、そういう夢追い人が集まる所らしい。
乙川との合流地点より少し北側の、矢作川の河川敷が滑空場となっている。舗装していないため、雑草がまばらに生えた、イナカの空き地のようでもある。昔ジープで引っ張っていたと記憶しているが、現在はトラックに積んだ大型のウィンチによってグライダーを牽引している。
(以下、しばらく実況放送風に。)
コクピットのシート(搭乗席)に収まり、両肩と腰の安全ベルトを締め、キャノピー(頭上のカバー)を閉めると、いよいよ待っていた瞬間がやって来る。ウィンチを巻き始めたとき、にぶい金属音と共に心地良い衝撃が体にかかり、左右の風景が後方に飛んでゆく。
グライダーは40~50m滑走して浮上する。思っていたより短い離陸距離だ。数秒後には、矢作川近郊の岡崎の街並みが体の両サイドの眼下に広がる。こうしたオートバイにも似た、外部との一体感が旅客機やセスナにはない醍醐味である。いわば戦闘機的、男のテイストである。
機体は千葉さんの巧みな操作により、ゆるやかな弧を描きながら、らせん状に上昇気流をとらえて昇ってゆく。朝起きた頃は雨空であったが、今は雲間に太陽が見え隠れしている。太陽が出て、空気が暖まって来ないと、上昇気流も発生して来ないそうだ。
岡崎城の上空あたりから、乙川と緑の山並みに囲まれた中心街の全情景がとらえられる。このとき「やはり岡崎の町づくりのポイントは、この二つの川の有効活用にある」と確信できた。
以前私は南米でセスナに搭乗したとき、助手席で操縦をさせてもらったことがあった。エンジン付きの方が少々ミスをしてもすぐに立て直すことができて安心な気がする。しかし実際はグライダーの方が飛行安定性は高いそうである。
どちらにしても、町づくりに関わる者は、時にふるさとを200~300m上空から改めて眺めることも必要であると感じた。地上を歩いて回って、地図上で想いを巡らせることも大切であるが、数千m上空の旅客機の窓から見るのともまた違うインスピレーションがわいてくる。
名古屋空港が主空港であった頃は、季節や天候、行き先によって、岡崎上空も旅客機の航路となるせいで、グライダーの空域制限が厳しかったそうであるが、セントレア開港のおかげで飛行可能空域が広くなったとのことである。
いずれにせよ町の真ん中でグライダーを飛ばしている所など全国でも珍しいことである。中には岐阜など県外からグライダーをやりにここまで通っている人もいるそうだ。でもその気持ちは私にもよく分かるような気がする。一度海や空に魅せられた者は、海上に浮かんでいるだけで、あるいは空を飛んでいるだけで、何物にも替えられない至福の一時を得るのだ。
私の乗せてもらったグライダーは巡航速度は100~150km/hぐらいだが、280~300km/hぐらい出せる高性能機だそうである。第二次大戦中のエンジン付きの戦闘機が500~600km/hぐらいだから、そのすごさはよく分かる。
その後10分程の飛行の後、エアーブレーキを使って速度を落とし、北側から矢作川河川敷に無事着陸した。そして下りた途端、あのNHKの突然インタビューに遭遇することになったのである。
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昭和45年(1970年)に旧・岡崎航空青少年隊の関係者により設立された現在の「岡崎飛行クラブ」は、今年で43回目の市民体験飛行会を行いました。希望者は岡崎市の市政だよりに案内が出た折に応募下さい。毎年抽選で搭乗者が決まるそうです。また、岡崎飛行クラブに入会を希望される方は下記までご連絡下さい。免許取得のためには個人差がありますが、100~150回の教官同乗飛行と100回ほどの単独飛行の経験があれば、受験資格となるそうです。試験は国土交通省の試験管による実技試験となり、日時は不定期だそうです。また無免許でも決められた場所ならグライダーの単独飛行は可能とのことです。免許取得費用は、入会金、年会費、訓練費の合計で40万円ほどかかるそうです(3~4年で)。
岡崎飛行クラブ ホームページ
http://www.okazaki-soar.com/
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