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2013年4月23日 (火)

八丁味噌、仕込み・石積み式

 八丁味噌と言えば岡崎の代名詞のようなものであるが、私達岡崎の人間にとって昔からお馴染みすぎて、意外と基本的なことを見落としていることがあるものである。私なども八丁のある連尺学区で生まれ育った一人であり、小、中学校と何回も八丁の味噌蔵は訪れており、写生大会では味噌ダルの絵を描いたことも覚えている。
 ところが、今回〝石積みの儀式〟のご案内を頂くまで味噌ダルの上の石のことについては、漬けモノ石と同じくらいの認識しか持っていなかったというのが実態である。

早川久右衛門代表、浅井信太郎社長

 現在、岡崎で伝統的技法で古来の八丁味噌を製造しているのは、今回訪れた早川家(早川久右衛門・19代)の「カクキュー」と浅井信太郎社長の「まるや八丁味噌」の二軒だけとなっている。どちらも大豆と塩と水だけで熟成させる伝統手法で味噌造りを代々続けてみえるのであるが、同じ手法であっても出来ばえには素人には分からぬ微妙な違いがあって、それぞれに全国の有名料亭にひいき筋をもってみえるという。なにせ皇室御用達の看板が輝いている。有名料亭でアカダシというのは通常八丁味噌のことである。
 味噌を造るための味噌ダルは厚さ5cm程の杉の板を使っている。高さ・直径ともに6尺(1.8m)とのことである。タルを組む職人はいるが、竹で編んだ帯(?)で外側を巻く技術を持った名人が絶えてしまい、現在は鉄製のワイヤーで締めている。かつてNHKの「純情きらり」の撮影の折はワイヤー締めでは絵にならないので、NHKの造形の部の人がゴム勢の竹帯を製作して上からそれをかぶせてドラマの撮影をおこなったそうだ。

八丁味噌 味噌蔵

 今回特に御案内を頂いたのは、江戸時代に作られていた頃と同じ条件で、かつての味と香りを再現する試みを見学するためにお招きを頂いたのである。
 創業当時に使用されていたとされる地元産大豆「矢作」の存在が分かったのは7年前。通常使用してきた大豆(と言っても厳選したもの)なら約2年の熟成で八丁味噌ができ上がるそうだが、地元オリジナルの大豆「矢作」を使用した場合は、3年(三夏二冬)を越えてようやく味がまとまるということである。
 大豆の性質が以前のものと違うため、熟成過程で何度も石を下ろし味見をして、再度石積みをするというテマをかけての特製味噌であるという。今回で3回目の仕込みとなるが、年によって大豆の出来に差があり、今年は一タルのみ(6t)であるという。上に積む石もただ漫然と積んであるという訳でなく、積み方に伝統の技法があり、一通り覚えるのに3年くらいかかるという。きちんと積み上げた石は地震にもビクともしない。一番上に積む石だけは形状が丸型で、「玉石(たまいし)」とか「まんじゅう石」とか呼ばれ、仕上げの重し石でもある。味の良さだけでなく熟成タルの形状、見た目にもこだわるところが日本人の美意識、日本の文化のあらわれらしいではないか。一通り仕事を覚えてベテランの味噌職人と呼ばれるまでに10年はかかるそうである。

 式典終了後、カクキュー、まるや両店の社長さんと写真に収まるが、これからも御両名には元気でガンバって頂きたいものである。
 なにせ、これからの岡崎は、観光産業を町おこしの新しい柱の一つとして考えており、お城、大樹寺と並ぶ岡崎観光産業の三種の神器のひとつがこの八丁味噌であるとも言えるからである。

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