私が影響を受けた6冊の本
読書は趣味のひとつですが、特に私が影響を受けたと思われる本は以下の6冊です。
アーネスト・ヘミングウェイ 『老人と海』
中学生のとき夏休みの感想文の宿題で本も読まずに、NHKの9チャンネルで放映された映画、スペンサー・トレイシー主演の「老人と海」を見て感想文を書いたところ、県のコンテストに入選してしまった。月曜集会で表彰状をもらってからばつが悪くてあわてて原作にあたった思い出の本である。
少年と老人の素朴な会話、中に出てくる大リーグのジョー・ディマジオの話、時間の経過と共に変化する海の描写、一昼夜を超えるカジキマグロと老人との戦い、そうしてそのあとに訪れる無慈悲なサメの攻撃、頭と骨だけになったカジキマグロを持って港に帰り着く老人の心の空白と静寂が、今も映画の場面とともに頭にやきついている。
海への憧れと人生の不条理を知るきっかけとなった物語である。
芥川龍之介 『侏儒の言葉』
人生や社会、人間をシニカルな目でときほぐしている。
高校生の私にとって、初めて文学的な視点を開いてくれたのがこの本だ。
三島由紀夫 『文化防衛論』
「若きサムライのために」という本のあとに読んだものである。
日本の文化と日本人の精神構造、日本の国家の成り立ちについて三島なりの分析がなされている。そしてそれが崩れ去ることに対する危機感と、守り抜くための心構えのようなものが書かれている。高校時代、思想的に大きな影響を受けた一冊。
道元 『正法眼蔵』
アメリカにいたときに先輩にすすめられて読んだ本。最初は何の本かと思ったが、曹洞宗の創始者である禅宗の僧の著作であった。
留学中にさまざまな迷いにとらわれたことがあったが、この本を何度も読み返すことによって、心の均衡を取り戻すことができた。心の薬のような本である。
松野頼三 『保守本流の思想と行動』
秘書時代に先輩からもらった本の一冊である。
松野頼三氏は、九州出身の代議士であり、福田赳夫元総理大臣の懐刀と言われた人である。
政治家は選挙で戦わなくてはならない。しかし、どんなに激しい戦いになっても一分を残した戦いをしなくてはならない。100パーセントの戦いをしてしまうと、もう取り返すことができなくなる。今は敵であっても、政治の世界にいる以上、状況の変化によってはその敵と手を結ばなくてはならない時が訪れる。そんなときに話ができる余地を残しておかなくてはらないからだ。
保守の政治というのはそういうものである。
最初に読んだときには、そんなものかと思っただけであったが、今では私にとってこの本は政治の世界で生きるためのバイブルのようなものである。
伊藤肇 『左遷の哲学』
衆議院選挙の失敗のあと、参議院議員の成瀬守重先生から一冊の本が送られてきた。それがこの本であった。
人間は投獄や大病、そして長期の左遷の三つを経験しないと本物にはなれない。ことに政治を志す者はそうした不条理な体験をくぐらないと大物にはなれない――と書かれてあった。若くして大きな挫折感のさなかにあった私にとって、砂漠でオアシスに出会ったような気持ちにさせてくれた本であった。失意にある友人、大病で入院中の友人などに何冊もプレゼントした本である。
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