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2019年1月30日 (水)

スウェーデン訪問記 4.学生交流、国家システムについて

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 ウッデバラでの歓迎式典と除幕式、記念行事を終えた我々は現地視察の日程に入った。3日目の朝、最初に訪れたのはウッデバラに5つある高等学校の一つであるオストラボー高校であった。
 小雨に濡れながら訪問した我々を迎えてくれたのは、3組の高校生グループであった。彼らは洋服のリサイクルや地元産品を活用したビジネスを考案していた。すでに高校生にして起業家としての発想を持ち、学校もそれを支える教育を行っている。このグループの中にはすでに全国大会に出場し、起業して利益を出している学生もいた。大学で行うビジネススクールの高校生版と言えるかもしれない。昨夏、現地を訪れた岡崎商業高校の代表も彼らと交流をしている。

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 この学校のカフェテリアで、スウェーデン料理ではポピュラーなミートボールとポテトのグラタンの昼食を食すこととなった。かつての給食を思い出させる味であった。

 食堂に向かう途中、突然髪の長い女子高生に声をかけられた。なんと彼女は3年前の中学生訪問団の一員として岡崎を訪れており、「これがその時に市長さんと一緒に撮った写真です」と言って、自分のスマートフォンの画面の写真を何枚も見せてくれた。彼女はリム・ゼライヤさんという方で、当時岩津中学校に通ったそうであった。

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(後列一番右がリム・ゼライヤさん。2015年10月、岡崎市役所にて)

 全国に国際交流を謳っている自治体は数多くあるが、姉妹都市の看板を掲げているだけの所も多く、岡崎市のように様々な形で実のある交流を続けているケースは稀である。この点が本市の強みであり、外務省からも高い評価を受けている所以(ゆえん)である。
 その後、幼児向けのプレスクール(保育園)と高齢者のケアホームの視察を行った。改めてこの国が社会主義を基礎に置いて国づくりを続けてきた国であることを感じたものである。

 現地で聞かされた話であるが、今から60年程前には、スウェーデンでも人の考え方は日本と同じ「男が外で働き、女が家を守る」であったそうだ。しかし人口の少ない国で(1960年は約750万人、現在は約1千万人)、生産性の高い豊かな国家を保つため、男女共働き社会のシステムの必要性を説き、現在の仕組みを作り上げたそうだ。
 子供が生まれれば両親はそれぞれ240日(夫婦で計480日)の産時休暇が認められ、その後職場復帰ができるシステムも確立されている。男女共働きを前提とした社会であるため、すべての子供は保育園に入園できる。
 スウェーデンの学校は小学校から大学までほとんど公立であり、本人の意志と能力さえあれば、すべて公費で面倒をみてもらうことができる。入学金も授業料も必要なく、しかも義務教育である小中学校の9年間は教科書代、文房具費、教材費に加え、給食費や学校医療費も必要ないという。高等学校、大学も教育費は無料である。
 スウェーデンには学習塾や家庭教師のようなものはなく、中学2年生までは成績表もないそうである。それでも経済協力開発機構(OECD)により3年ごとに行われる高校生対象の国際学力試験(PISA)において、参加国60ヶ国ほどのうち、中・上位の成績を保っている。所定の条件を満たせば、こうした権利は外国人も同様の恩恵を受けられることになっているが、近年の中近東からの難民の急増によって運用に難しさが出てきているとのことであった。
 医療においても年間13,400円ほどの支払い上限で外来診療を受けることができ、入院した場合でも一日当たり最大1,200円程度の負担で済むそうである。基本的にスウェーデンの医療システムは国とランスティング(県)、そしてコミューン(市町村)の三つのレベルで役割を分担対応している。

 このように行き届いた高福祉の制度を維持するためには、当然のことながら高い税制がしかれている。現在、スウェーデンでは消費税は25%(食品などは12%または6%)。一般に収入の半分近くは所得税となり、累進課税率も高く、超高収入のテニスプレーヤーであるビョン・ボルグのような人は税率の低い国に移住している。しかし一般のスウェーデンの国民は国と社会に対する信頼感が高く、高い税金と社会保障のための高コストを容認しているという。「大金持ちにはなれないが、そこそこに安定して暮らしてゆける」ということだろう。こうしたシステムのために企業の果たす社会保障コスト負担は大きい。その代わりにこちらの企業は日本のように個人退職金を支払わないし、会社の福利厚生に大きな費用を使ったりはしない。
 またスウェーデンには強力な労働組合があり、「連帯賃金政策」という大原則が定められている。同じ仕事には同一の賃金を支払うことになっており、賃下げを行うこともできない。そのため企業としては従業員のリストラをするか効率の悪い事業から撤退するしかない。
 こうしたスウェーデンの賃金制度は経営の弱い企業産業の淘汰につながってきている。(失業者対策は国の責務となっている。)

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 基本的に企業は経営難となっても国の支援を期待できないため、有名な自動車メーカーのサーブやボルボにおいても政府の救済措置はされなかった。サーブはゼネラルモーターズの子会社になったのち経営破綻し、ボルボは外国資本の傘下に入っている。こうした政府の方針の背景には、1980年代の造船業界の危機において政府の援助が衰退産業の延命にしかならなかったことに対する反省があるのだという。
 スウェーデンのシステムには学ぶべき点も多くあるが、機能的である反面ドライなシステムのあり方が日本人の伝統的価値観、考え方に合うかどうかは何とも言えない。
 2005年に行われたスウェーデン財務省のシミュレーションでは、納めた税、保険料のうち45%はその年のうちに本人にサービス還元され、また38%は生涯のうちに本人に還元され、残り18%は他者への再配分となるというが、本当にそんなにうまくいっているのであろうか?

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