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2016年5月18日 (水)

六供浄水塔ギャラリーの夢

六供配水場配水塔

 岡崎市内の中央部にある甲山(かぶとやま)の北側の頂(いただき)に六供浄水場はある。平成23年度に浄水場としての機能を廃止したことから、現在、正式には「六供配水場」と呼称される。
 この施設は昭和9年(1934年)に建設されたものであり、当時の地方都市にあってはモダンな西洋風の建物であった。中でも端に立つツタの絡まる配水塔の姿はヨーロッパの古城をほうふつとさせる風格さえある。近在で育った我等かつてのワンパク坊主どもにとっては、昔日の面影を今日に伝える懐かしい建物の一つであり、市の景観重要建造物指定第2号でもある(第1号は岡崎城)。

 当時まだ珍しい鉄筋コンクリート製の建物であったこの配水塔も、さすがに80年を超える使用による老朽化は免れることはできず、配水池施設は現在一部改築工事中である。古く巨大な貯水槽が撤去され、その跡地には災害対策用の給水設備と災害時の避難スペースを兼ねた利用計画が立てられている。

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岡崎市・六供配水場の平面図

 このエリアは、かねてより地元の愛宕学区から、憩いの広場として使用できる公園として開放してほしいという要望が出されていた。上下水道局としては、将来施設を更新する際に、現在の施設のある場所と広場の予定地を交換使用する予定としている。
 とは言うものの、私としては何とか地元の要望に沿った形での土地利用ができないかと思っている。地元では、さらに配水塔のまわりにおしゃれなカフェ・レストランでも造ってほしいという声もある。確かに、岡崎の中央部の高台に位置する施設であり、眼下に広がる市街地の眺望を考え合わせれば、その利用価値には大きな可能性がある。

 そんな思いを胸にしながら、先般3月29日、施設見学に出かけてきた。私は近くにある愛隣幼稚園に通っていたため、この辺りは昔から見慣れた風景であり、子供の頃から何度も遊びや写生で訪れた場所でもある。ところが何と塔の中に入って屋上に登るのは今回が初のことであった。

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 直径12.8メートル、高さ17.2メートルの配水塔の屋上からは、中心市街地が東西南北、それぞれに見渡すことができる。屋上へは、塔の外側に併設された長方形の建造物内にしつらえたコンクリート製のジグザグ階段で上がる。途中ガラス窓から塔内の水槽の様子をうかがうことができる。屋上からの展望は岡崎の新たな魅力の一つともなるだろう。
 現在、乙川リバーフロント計画として整備しているのは籠田公園周辺までであるが、10月に改修工事の終わる市民会館と六供地区の古い街並み、そして坂道を登りつめた所に位置する配水塔と同時代に造られた旧ポンプ棟などの施設は、うまく活用すれば次の段階のまちづくりの新たなテーマを形成する重要な要素(ランドマーク)になるものと考えている。

ソロモン・R・グッゲンハイム美術館

 建物の規模と様式は異なっているが、ニューヨーク市のセントラル・パーク東側の5番街に面した一角に、アメリカが誇る建築家フランク・ロイド・ライトの設計によるグッゲンハイム美術館がある。上層部が斜めにひしゃげた円筒形のユニークな建造物であり、内部はらせん状のゆるやかなスロープ構造で、中央は吹き抜け状となっている。奇抜なデザインすぎてニューヨーク市からの建設許可がなかなか下りず、そのため建築が遅れたといういわくつきの美術館でもある。つまりは、この美術館そのものが近代芸術なのである。
 来訪者はエレベーターで最上階まで上がりスロープを歩いて下りながら、壁面に飾られた近代美術絵画を鑑賞することになる(もちろん下から登ってゆくこともできる)。これならは車イスの人でも楽である。

ソロモン・R・グッゲンハイム美術館

 かたつむりの殻のようなこの斬新な形状の建物が出来たのは、1959年と意外に古い。かつて1970年代半ばにニューヨーク大学のALI(American Language Institute)に在籍していた私はヒマな時によく一人でこの美術館を訪れていた。当時モネの特別展が行われており、人のいない時に長イスに横になって睡蓮の絵をあかず眺めていたことを懐かしく思い出すものである。

 よけいなことを長く書いてしまったが、将来六供の配水塔が使用されなくなった時に内部を改修して美術作品のギャラリーとして使えないかと思っている。その時のモデルとなるのがソロモン・R・グッゲンハイム美術館であり、らせん状のスロープを内側に設置することで、建物の耐震補強を兼ねさせたいと考えるものである。(エレベーターは中央に設置する。)
 まだ配水塔は使用中であるし、議会に正式に相談した訳でもないため確定的な話ではないが、一つのプランとして考えてみる価値はあるものと思う。配水塔はグッゲンハイムほどのスペースはないため、「六供浄水塔ギャラリー」とでも名付け市民作家の発表の場などとして使って頂いたらどうかと考えている。そしてその際には旧ポンプ棟の古風な建物も、カフェ・レストランとして改装することで相乗効果が得られるだろう。

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 なにも公営でやる必要はない。こうしたことのノウハウは民間の方が長けているから、岡崎市は用地と施設を提供してコンペによる民活の力により運営する方が理にかなっているものと思う。
 いずれにしても、こうした利用価値の高い伝統的な施設や歴史の重さを感じさせる景観がたくさん残っている岡崎は素晴らしい所であり、今後もそうしたふるさとの遺産を一つ一つ大切に有効活用してゆきたいものである。

追記
 ちょうどこの原稿を書いている頃、岡崎市の「歴史まちづくり計画」(正式名称: 歴史的風致維持向上計画)が国の認定事業となったという正式な連絡が入りました。そして明日、5月19日に国土交通省に出向き、認定証の交付を受ける予定です。担当部局の努力に感謝すると共に御報告致します。


(ソロモン・R・グッゲンハイム美術館の写真は「Wikimedia Commons」から借用しました。)

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